■近代文藝之研究|時評|『其面影』を評す(2)
- カテゴリ: その他
- 2013/03/26 22:46:51
■近代文藝之研究|時評|『其面影』を評す (2)
從つて或は前者の眞面目な狭い、余裕の無い、一杯々々の、鉛の如く重い憂愁の調を擇ぶものもあるべく、或は後者のゆとりある、動ゝもすれば、嘲弄的にすらならんとする瞰下的な所を擇ぶ者もあるべく、兩者の趣味は必ずしも一致して居らぬ。たゞ其の主人公の性格、及び其...
島村抱月・著『近代文藝之研究』のテキスト・データ化ブログ。2014年02月に全文のデータ化終了。只今入力ミス等の校正進行中。
■近代文藝之研究|時評|『其面影』を評す (2)
從つて或は前者の眞面目な狭い、余裕の無い、一杯々々の、鉛の如く重い憂愁の調を擇ぶものもあるべく、或は後者のゆとりある、動ゝもすれば、嘲弄的にすらならんとする瞰下的な所を擇ぶ者もあるべく、兩者の趣味は必ずしも一致して居らぬ。たゞ其の主人公の性格、及び其...
■近代文藝之研究|時評|『其面影』を評す (1)
『其面影』を評す
『其面影』を讀むと觀察描寫の老錬といふことが誰れの眼にも先づつく。用語文章の如きも、金臺にいぶしを掛けたやうな苦心が時としてはなほ覺えず、知らず金光を露呈する趣味である。三十九章の「家と名が付きや埴生の小屋も」のあたりの文調...
■近代文藝之研究|時評|『青春』を評す (3)
或る意味で欽哉の弱點はなるほど時代の弱點で、而して作者が之れに痛快な一抉りを與へたといふ功はあらう。けれども之れと同時に作者は時代の犠牲者を描くといふ意識を一層強く持つて欲しかつた。つまり時代の弱點を描くといふことゝ、時代の犠牲者を描くといふ〓[#「こ...
■近代文藝之研究|時評|『青春』を評す (2)
次に主人公の性格の缺點を作者が、意識して書いたといふこと、之れは善惡いかやうにも見られやう。善い方からいへば、之れがために性格が活きて來る。實際個相を具へたものになつて來る。主人公の性格が終始一貫して、何所となく平凡作者の覗ひどころと違つた者の書いてあ...
■近代文藝之研究|時評|『青春』を評す (1)
『青春』を評す
『青春』が藝術品として特に注意を要する點は、其の想を時代と觸れしめたといふことよりも、第一、其の文章が技巧の絢爛を盡して、紅葉の後、其の脈の頂點を此所に極めたといふこと、而して恐らく此の種の技巧は、此の邊を境として今後の小説...