■近代文藝之研究|時評|文學入門者に(17)
- カテゴリ: その他
- 2012/06/03 15:41:24
■近代文藝之研究|時評|文學入門者に (四)(1)
四
次に活自然、活人生を見るに、自ら實驗するといふことは容易のことではない。他《ひと》のやつてるのを傍觀するので澤山だ。又それしか出來ぬといふ人がある。是は一應尤もではあるが、然し事實に照らして見るに、作品には何處かに自己の經歴した味...
島村抱月・著『近代文藝之研究』のテキスト・データ化ブログ。2014年02月に全文のデータ化終了。只今入力ミス等の校正進行中。
■近代文藝之研究|時評|文學入門者に (四)(1)
四
次に活自然、活人生を見るに、自ら實驗するといふことは容易のことではない。他《ひと》のやつてるのを傍觀するので澤山だ。又それしか出來ぬといふ人がある。是は一應尤もではあるが、然し事實に照らして見るに、作品には何處かに自己の經歴した味...
■近代文藝之研究|時評|文學入門者に (三)(5)
初めは一寸|巧《うま》いことを云ひ、素晴らしい所を見せるけれど、人工で修養した基礎が足らねば直ぐ色が褪せ、動いて行くことが出來なくなり、限りなく奧から取り出す力が衰へる。これは現今の作者間にも表はれて來る傾向である。無限に自己を發展させるだけの自覺...
■近代文藝之研究|時評|文學入門者に (三)(4)
結論は作者一個の直觀、一個の人生觀、天地觀で差支ないが、その人生觀、天地觀が深さを有して來るには一分の哲學的傾向があつて欲しい。哲學者にはならずとも宜いが、哲學者的の深さはつて欲しい。只問題は其の哲學的考察に囚へられて了つて、折角の創作心を破壞する...
■近代文藝之研究|時評|文學入門者に (三)(3)
作を讀むことに聯つての難問は理論上の研究は如何するかといふことである。古來理論の研究は却て創作の邪魔になるといふ説と、邪魔にはならぬといふ説との二があつて、未解決であるが、近代文學の傾向より考ふるに、或程度迄の理論の修養は必要であると思ふ。科學者た...
■近代文藝之研究|時評|文學入門者に (三)(2)
之に次いでは西洋ならば前代に進むところであるが、日本では過去に歸るよりも西洋のものを讀んだが宜い、これは日本現代の作物と同時に讀んでも差支えない。然しなるべくは日本現代が大抵わかつた後、西洋の者を逆まに讀んだが宜い。それが十分に纏まつたらば、過去の...