■近代文藝之研究|研究|沙翁の墓に…(2)
- カテゴリ: その他
- 2011/08/11 21:41:58
■近代文藝之研究|研究|沙翁の墓に詣づるの記 一(2)
椅子をストーヴに近く引き寄せ、手を拱《こまね》いて、默然《もくねん》として燃え立つ火影を見つめゐる、彼の旅人《たびゞと》の面《おもて》は赤く輝いて、額《ひたい》の廣いのが目立つ。
折から靜に扉《と》を押して這入つて來たのは、此の家《や》の娘で...
島村抱月・著『近代文藝之研究』のテキスト・データ化ブログ。2014年02月に全文のデータ化終了。只今入力ミス等の校正進行中。
■近代文藝之研究|研究|沙翁の墓に詣づるの記 一(2)
椅子をストーヴに近く引き寄せ、手を拱《こまね》いて、默然《もくねん》として燃え立つ火影を見つめゐる、彼の旅人《たびゞと》の面《おもて》は赤く輝いて、額《ひたい》の廣いのが目立つ。
折から靜に扉《と》を押して這入つて來たのは、此の家《や》の娘で...
■近代文藝之研究|研究|沙翁の墓に詣づるの記 一(1)
沙翁の墓に詣づるの記
一
千五百八十六年の春、四月の央《なかば》でもあつたらう、ウツドストツク街道《かいだう》からオツクスフオードの北の宿《しゆく》はづれに差しかゝつた、二十二三の旅人がある。疲れた足を停《とゞ》めて今...
■近代文藝之研究|研究|イブセンの解決劇 (26)
此の作が殆ど屋外を舞臺とする如く、作の調子はいかにも盛夏の海濱の強い花やかな光線に滿ちた趣である。隨つて夫の憂欝な神秘な北海の標象から見れば、舞臺が明るすぎる感がする。さればこそイブセンは必要の場合に夜や夕暮を多く使つた。しかも尚それが夏の夜であ...
■近代文藝之研究|研究|イブセンの解決劇 (25)
併し結局社會は外から救はれるものではない。各個人が中から救はれゝば、社會はおのづからにして善くなる。個人の心靈問題が社會問題よりも先であつた。斯う考えて個人の救濟を書いたのが『海の夫人』である。さればイブセンの使命は此の作に達して始めて全うせられ...
■近代文藝之研究|研究|イブセンの解決劇 (24)
しかしながら問題はこゝから生ずる。此の作は果たして有解決のために幾ばくの興味と深さを加へたであらうか。吾人の見るところを以てすると此れだけの解決を兎も角も文字の上に見はさんとする結果は、結末の邊が甚しく知力的になり過ぎて、エリーダの心機一轉など、...