■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値(15)
- カテゴリ: その他
- 2009/12/06 10:59:51
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|二 (12)
又は眞山青果氏の『家鴨飼』の主人公が巡査から立退の説諭を受けて、
「だとつて家鴨は私のものだ」
「誰も家鴨をお前のものでないたア云はんよ、會社は家鴨の背中へ柱は立てない」
と警官は噴出した。
皆ドツと笑つた。老爺は額越しにヂロリ皆の顔を見た。(...
島村抱月・著『近代文藝之研究』のテキスト・データ化ブログ。2014年02月に全文のデータ化終了。只今入力ミス等の校正進行中。
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|二 (12)
又は眞山青果氏の『家鴨飼』の主人公が巡査から立退の説諭を受けて、
「だとつて家鴨は私のものだ」
「誰も家鴨をお前のものでないたア云はんよ、會社は家鴨の背中へ柱は立てない」
と警官は噴出した。
皆ドツと笑つた。老爺は額越しにヂロリ皆の顔を見た。(...
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|二 (11)
「さうさ、僕は救世軍にでも入りたいな。心にも無いことを書いて讀者の御機嫌を取る雜誌稼業よりや、あの方が面白いに違ひない。あの男は欠伸をしないで日を送つてるんだ。生きてらあ」
「はゝゝ」と織田は大口開けて勢無く笑つて「僕は青年が浅薄な説教なんかし...
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|二 (10)
今最近時の佳作の中で、便宜のため『早稲田文學』に載つたものゝ一二を取り出せば、正宗白鳥氏の『何處へ』の中で、主人公健次と友人織田とが救世軍の説教を聽いた後のところ、健次が
「面白いぢやないか、彼奴は地球のどん底の眞理を自分の口から傳へてると確信...
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|二 (9)
之れを作家の態度覺悟の上から見ると、恰も近時の作風と相反することゝならう。外形の力で内容を増加せんとする態度と、内容以外に一毫も外形の寄與を許すまいとする態度と、筆を執る時の氣持が違ふ。又表面に見えてゐる事柄だけを面白く書かうといふ態度と、其の背...
■近代文藝之研究|研究|自然主義の價値|二 (7)
一字一句皆洗練せられて、是れだけづゝ別々に味へば、含んでゐたいやうな甘味がある。けれども詮ずるに作者がこしらへて言はせた言葉といふ埓をば破り得ない。見物を前に据えて置いて、さてうまい事を言つて見せるぞと舞臺に見えを切つた時の臺詞である。それだけの...