■近代文藝之研究|序に代へて人生觀上の…(8)
- カテゴリ: その他
- 2009/02/17 18:05:39
■近代文藝之研究|序に代へて人生觀上の自然主義を論ず 四(2)
併し斯んな事は畢竟ずるに私の知識の届く限りで造り上げた假の人生觀たるに過ぎない。是れが分かつた爲に私の實行的生活が變動する譯でも何でもない。のみならず現に其の知識みづからが、まだ此の上幾らでも難解の疑問を提出して休まない。自己とい...
島村抱月・著『近代文藝之研究』のテキスト・データ化ブログ。2014年02月に全文のデータ化終了。只今入力ミス等の校正進行中。
■近代文藝之研究|序に代へて人生觀上の自然主義を論ず 四(2)
併し斯んな事は畢竟ずるに私の知識の届く限りで造り上げた假の人生觀たるに過ぎない。是れが分かつた爲に私の實行的生活が變動する譯でも何でもない。のみならず現に其の知識みづからが、まだ此の上幾らでも難解の疑問を提出して休まない。自己とい...
■近代文藝之研究|序に代へて人生觀上の自然主義を論ず 四(1)
四
知識で押して行けば普通道徳が一の方便になると共に、其の根柢に自己の生を愛するといふ積極的な目標が見えて來る。世間には此の目標を目障りだと言つて見まいとするものもあるが、自分には何うしても見えると言ふ方が正直と...
■近代文藝之研究|序に代へて人生觀上の自然主義を論ず 三(3)
更に一つは、義務とか理想とかの爲に、人間が機械となる場合がある。唯何とはなしに、爲なくてはならないやうに思つて爲る、たゞ一念其の事が成し遂げたくてする。斯んな形で普通道徳に貢献する場合がある。私も正しく其の通りの事をしてゐる。併し...
■近代文藝之研究|序に代へて人生觀上の自然主義を論ず 三(2)
まだ一つある。私は寧ろ情負けをする性質である。先方の事情にすぐ安値な同情を寄せて、氣の毒だ、かわいさうだと思ふ。それが動機で普通道徳の道を歩んで居る場合も多い。そして是れが本當の道徳だとも思つた。併し段々種々の世故に遭遇すると...
■近代文藝之研究|序に代へて人生觀上の自然主義を論ず 三(1)
三
此所まで回顧して來て、何時も思ひ悩むのは其の奧である。何が自分をして諦めさせるのだらう。私に取つてはそれが神の力でも信仰の力でも無くして、實に自分の知識の力である。若し自ら僭して聰明といふことを許されるなら、...