Nicotto Town



『砂漠のジミヘン』を聴き思ったこと



表題のごとき呼び方で売られようとしているニジェール国籍のトゥアレグ族、
エムドゥ・モクターのバンドを色々聴いてみました。
トゥアレグはベルベル人の一派。アウグスティヌスもベルベル人だったのは知らんかった。

まず当然ながら、ジミヘンと彼らは無縁です。このキャッチで過去、
ロビントロワー、フランクマリノ、ウリジョンロート、ヴァーノンリード、
ジャンポールブレリー等々大勢が迷惑した。ヴァンヘイレンとも無関係。

一聴すれば判るとおり、電化したムスリムの音楽というのが正解でしょう。
ボーカルやコーラスは日々の詠唱に似たトーンを常に帯びていて、
リフレインやリズムには『祈り』という要素も強く、敬虔な音楽に感じます。

頭をよぎったのは「第三世界の音楽」という時代遅れの単語でした。
西欧と共産圏に対峙する第三の勢力としての第三世界という呼称は廃れたが、
殆ど報道されぬアフリカの小国の現状を伝える歌詞は往時を思わせます。

音楽的には……すぐ思い出したのが、半世紀前の日本の二つのバンド。
ひとつは日本テケテケ界の大御所、寺内タケシ御大率いるブルージーンズ、
もう一つはフラワートラヴェリンバンド。理由は簡単です。

民族に根差した音楽を演る方法の一つに「五音音階」があります。
いわゆるペンタトニック、演歌のヨナヌキ旋法も同義です。
全世界にペンタはありますし、それぞれ民族固有の調律・調性を備えてます。

寺内御大も、FTBの石間氏もペンタトニックを表現の一つにしてまして、
そこに「和/やまと」というものを濃厚に感じてしまうんですが、
エムドゥ・モクターのペンタは(日本的に言えば)アラビア的ペンタです。

ブルースにならない。少なくともアメリカのR&B/ジャズとは全く違う。
トリルや同音異弦でかき鳴らすフレージングは螺旋状にうねり続け、
コーランの詠唱を思い起こさせる宗教的な香りを濃厚に漂わせてます。

遡れば1950年代、すでにムスリムとしての矜持を明らかにし、
ジャズ界で活躍した音楽家も大勢いたが、公民権運動と重なった。
ムスリム的なジャズマンというと……ローランド・カークあたりだろうか?

欧米の商業音楽界が食い物にしようと動いてる部分もあるけど、
この評価を利用し、したたかに欧米シーンを使ってやろうという気配も濃厚。
こういう人が一番怖い。「商売は商売」というムスリムの諺を思い出しました。




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