Nicotto Town



メロディアのリヒテルを聴く。



自粛と言った舌の根も乾かぬうちに、メロディアを買っちゃった。
ジャケットに裸で入っており、黴と埃にまみれた傷盤。
ビクターが出してた『ソビエトの十大巨匠』シリーズの1枚。

チャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番とラフマニノフの2番、
ムラヴィンスキー指揮のレニングラード交響楽団、ピアノがリヒテル。
演奏服姿で微笑む壮年のリヒテルのジャケットが素晴らしい。

黴と埃を取り除き、聴いてみた。スゴイ音! 期待を大幅に超えてくれた。
スクラッチノイズは結構あるし、録音も決して良くない。
片面で30分以上入れてるからカッティングレベルも低い。でもそうじゃなくて。

脳裏に刻まれたチャイコフスキーの音色そのもの、分厚く淀む中域。
ハードロックですよコレ。録音に何の工夫もなく、それが暴力的な迫力を生む。
テーマを弦が奏でピアノが暴れ疾走するあたりも、他の追随を許さない。

リヒテルは重厚だが端正という偏見を持ってたけど、このリヒテルも格好良い。
ムラヴィンスキーとレニングラードフィルが高評価なのも納得。
古き佳きソビエト連邦を体現した、赤軍的統一感のある音響構築です。

調べてみたら1959年の録音ということで古めかしい音質に納得。
ビクター盤はモノラルの原盤を疑似ステレオ化してるようです。
でもサッチモのSPが至高であるのと同じく、この盤も尊い。

ラフマニノフもまた、割れまくるピアノに飽和した管弦の響きにクラクラする。
時折ロマン溢れるメロを朗々と歌い上げるリヒテルも惚れ惚れするし、
ピアノ対オケ=1:1という協奏曲黄金比の手本みたいなオケも凄い。

リヒテルのエピソードがなかなか象徴的なのでライナーを引用。
独ソ戦が始まった頃、オデッサに住む母がモスクワのリヒテルを訪れ、
母が帰ったのちリヒテルもオデッサに戻る予定だったが、叶わなかった。

父はドイツ系オデッサ住民の一人として逮捕され処刑される。
母は父の弟と再婚しルーマニア、ハンガリー、ポーランドを転々。
戦後西ドイツに住み離れ離れに、1960年、母とリヒテルは20年ぶりに再会。

場所はニューヨーク、この時の演奏はCBSから出ているそうです。
リヒテルは母に対し、かなり冷淡な態度をとったという逸話も重い。
ソビエトを体現する大芸術家としての矜持か、トラウマとLGBTの所為か。

自粛していたメロディアだけど、逸話とともに聴くと、
時宜に適っているなぁとも思われ、ボリュームを上げてしまう。
明日法事を終えたらDisk Unionを覗こうか。




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