Nicotto Town



『Morning Dew』と『渚にて』



Ⅰ→♭Ⅶ/Ⅳ→Ⅰというコード進行の曲はそこら中にありますが、
『Morning Dew』もその中の一曲。朝露というタイトルは洒落ているが、
大して面白みのある曲じゃない。だがこの曲のカバーは非常に多い。

グレイトフルデッド、第一期ジェフベックグループとBB&A、ナザレス、
オールマンブラザーズ系、ロバートプラント、DEVO、ブラックフット等々。
進行が簡単でメロが印象的だからカバーが多いと思っていたが、迂闊だった。

1962年にカナダの女性シンガー、ボビー・ドブソンが発表した曲であり、
なんと1959年に映画化された、グレゴリーペックとエヴァガードナー主演の、
『On the Beach』に触発され書いたと知り、無知を大反省する羽目になった。

ネビル・シュートの終末SF『渚にて』はフェイバリットSFの一冊、
『On the Beach』もVHSビデオ買い、名画座にも観にいったほど好き。
アステアやアンソニーパーキンス、ドナアンダーソンにローラブルックス……。

だからDEVOも真面目に演奏してたのか(ベックは騒がしいだけだが)。
原曲も何度となく耳にしていたが、まさか『渚にて』のことだったとは。
さて話題をずらす。『渚にて』で誰がいちばんスキ?

王道はドワイト艦長とモイラでしょう。報われぬ大人の恋の代表です。
でもホルムズ夫妻、特にメアリーの現実逃避も素晴らしいし、
磨き上げたレーシングカーのシートで最期を迎えるオズボーンも泣ける。

『On the Beach』のDVDを探しに行こう。
エヴァガードナーが崖の上から海を眺めるエンディングで、
ドブソンのオリジナルを流して歌詞カードを読もう。懺悔の一日。

【蛇足】

エヴァガードナーって嫌いなんです、脂ぎったリズ的濃艶さが苦手。
でもこの映画は名画なので我慢する。グレゴリーペックは適役ですね。
アステアが一番佳いかな。身のこなしや仕草が粋で素敵。

2000年版のリメイクはかなりヒドいので全くお勧めできない。
モイラ役の女優さんのイメージが原作に近いことだけは褒められるが、
翻案部分は代表的な改悪、シュートが見たらコーラ瓶を投げるだろう。

『On the Beach』の素晴らしさの一つは、代表的な50年代の街並みを、
人払いしてちょっと小道具置くだけで『Ruins』に仕立てているところ。
モノクロならではのこの演出は、タルコフスキーの作風に近い。

核使用が身近に感じられる現在、若い世代に伝えたい小説/映画です。
あと、相互確証破壊という愉快な理論のバカバカしさを笑いたい人には、
『未確認原爆投下指令(フェイルセイフ)』をお勧めしましょう。

『Morning Dew』ってドアーズの『The End』に影響してるのかな。
和声進行や雰囲気、歌メロも似てると思いますし、
核の終末とオイディプスの悲劇も重なる。続けて聴くのも一興かも




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