Nicotto Town



コルトレーンはどう聴き進めるか?



マイルスに続きジャズ界のメルクマール的サックス奏者、
ジョン・コルトレーンについて紹介しようと思ったが……。
彼は『ジャズ』を逸脱した部分が魅力でもあり、嫌われる理由でもあります。

細かいこと言わずに、経年順で聴き進めると判ると思う。
昔気質のジャズマニアに愛される時代、楽理オタクに分析される時代、
アッチに行きかけている時代、アチラに行ってしまった時代に分類できることが。

【1】Moment's Notice 『Blue Train』(1957)

こういう位置から出発した人です。音が生硬、プレイが性急。
マイルスは「あの下手なテナー辞めさせろ」と周囲によく言われたという。
だがマイルスは何かを聴きとった。おそらく私たちも聴きとっているはず。

【2】Russian Lullaby 『Soultrane』(1958)

4曲目の王道バラード『Theme For Ernie』から突然なだれこむ光速ナンバー。
シーツオブサウンドという『蔑称』が生まれた原因の曲です。
速弾きギタリストって嫌われますよね。アレに似た超絶技巧に息が止まる。

【3】Countdown 『Giant Steps』(1960)

ここで我々は早吹きの意味を知る。ドラムとデュオでブルース的アドリブ、
調性が定まらぬまま逸脱し続け、裏でピアノが鳴り始め、耳をすませば……
テーマが出て終わり、のけぞる。コイツ、いったい何をやろうとしてんの!?

【4】My Favorite Things 『My Favorite Things』(1961)

JRのCM等でお馴染みのソプラノ曲。後半のソロはどこへ行こうとしてるのか。
既にエリックドルフィーと親しくなっており、彼とコラボすることになるが、
ドルフィーと違い飛翔しない。某評論家は地獄を這いずる戦いと評した。至言。

【5】Chasin' the Trane 『Live at the Village Vanguard』(1961)

ジャズに聴こえますか? いや、ジャズを借り何か別のものを演っているのでは。
演っているとも言い難い。何か別の「ところ」に行こうとしている。
超絶技巧を駆使しなければ垣間見すらできない、言語を絶するあちらの世界に。

【6】My Little Brown Book 『Duke Ellington & John Coltrane』(1962)

エリントンはジャズそのものみたいな人。ここでコルトレーンは、
敬意を持ち、オーソドックスなスタイルで演奏してるけど、
すでに乖離は決定的。濁ったギザギザの音色が鎧の隙間から時折覗く。

【7】You Don't Know What Love Is 『Ballads』(1963)

一般的ジャズ好きは佳い!と聴くのでしょうが、この盤のトレーンは怖い。
完全な狂人が全く正常に振舞ってることありますよね、あれと同種の音色。
愛を知らないというタイトルも象徴的、彼には愛も安息も無かったと思う。

【8】Dedicated to You『John Coltrane & Johnny Hartman』(1963)

珍しいことに毒気の無いトレーンの演奏が堪能できる後期の貴重な一枚。
ボーカル入りバラードのお手本として今でも勉強の素材になりそう。
これはジョニーハートマンの声質の手柄なのかもしれませんが。

【9】Aftrer the Rain『Impressions』(1963)

弩級ライブの締めくくりに置かれた静謐なナンバー。
単純で美しく、簡単そうな曲に聴こえるかもしれませんが、とんでもない。
あらゆる技術、音楽、理論を追究した努力の天才だけが至る境地だと思う。

【10】Expression『Expression』(1967)

遺作でのテナーによる、フリーインプロに近い演奏。キテるでしょ。
録音終了後にアルバムタイトルをどうするか尋ねられ、
「表現……それで十分だ」と答えたという逸話も伝説。

……定番『至上の愛』『アセンション』は好みからズレるので外しました。
10枚とも、ジャズ好きなら手に入れて損しない盤だと思いますが、
コルトレーン狂は山ほどいて評論や研究所書も大量。それらもご参考に。






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