Nicotto Town



生成AIの弦楽四重奏に考え込む



新年早々、深く深く考えたくなる楽曲に出会ってしまいました。
菊池成孔/新音楽制作工房によるサントラの一曲、
『AI制作による二つの弦楽四重奏の同時演奏』。

NHK-FM『Jazz Tonight』の聞き逃し配信で(まだ)聴けます。
まず楽曲としての完成度の高さに驚くしかない。
20世紀の現代音楽作曲家の作品と並べても遜色ない、というか判別不能。

次に制作過程で唸ってしまった。サンプリングすら使っていない。
AIに古今東西の楽曲を学習させたうえで、自分が生成した楽曲に対し、
同時並行でAIが内部で(いわば)インプロヴァイズしたものだという。

クレジットはあるが、正確には誰の作品となるのか?
敢えて言えばO-MAX(AIの名称)のスイッチを入れた人だろうと言ってる。
しかもこれは一部に過ぎず、文字通り延々と、永久に音楽を生成し続ける。

そして、ここに至った菊池氏の動機や発想にも考え込むことになる。
これはNHKのTVドラマ『幸田露伴は動かない』のサントラでありまして、
劇伴やCM等の楽曲制作のストレスをなくすことが目的の一つだと言う。

アニメ制作現場を例に挙げていたが、創造性を要求されるにもかかわらず、
経済的に報われないストレス過多の仕事があまりにも多いと嘆き、
それを打破するための試みの一つがこれなのだという。

菊池氏の主宰する集団で音楽を大量に作りカタログ化し、
そのカタログから楽曲を買わせるという経営をしているという。
しかもAI制作曲なら、電気代だけで無限にできる。客は選ぶだけ。

菊池成孔という音楽家を私は非常に嫌っているのですが、
大きな理由は冷徹な合理性を持つ真に知的/クレバーなスタイル。
商業音楽家として物凄い卓見と実力を持っていることは間違いない。

コルトレーンを単なるイディオム化したマイケルブレッカー以降、
最も先鋭的な位置にいる演奏家であり音楽家でもある。
21世紀のジャズマンの殆どに共通する才気を迸らせている。

菊池氏の話しぶりや思想の根底に、論破王ひろゆき氏に通じるものも感じる。
それだけで私の嗜好からは外れるんだけど、時代に抗うのはバカだし、
成果実績主義の現代、これだけの『作品』を生んだことも凄いと思う。

……ね、考え込むことになる理由がうすうすわかっていただけますかね。
徹頭徹尾非社会的で個人主義のワタクシ、商業音楽という点を差し引いても、
心のどこかで「これは【音楽】じゃねぇ!」と叫んでるのを自覚する。

でも、二つの弦楽四重奏という作品を素晴らしいと思ったのも事実。
この作品を譜面にして生身の演奏家が演奏したら……頭が痛くなる。
楽器を初期衝動でかき鳴らす時代はすでに終わったんだなぁー。

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2024/01/16 22:27
>ストレイソルジャさん

今日は。NHK受信料を払い続けている私、世間様とかなり異なる見方をしています。
端的に言えば「主流マスメディアは世界/世間をこう認識させたいのだ」という意図を知るための、
観測気球・リトマス試験紙として重視している……といいますか(分かりづらくスミマセン)。

NHKの自動音声導入についてですね、コレ、一度書きたかった話題です。
現在の地位(予算)を維持しつつSDGs的放送権益を死守したい経営陣が、
コストカットするために採用しただけでもありますが、事はそこに留まらず……

「アナウンサーは不要、数字取れるタレントを自製したい。無理なら全て外注でイイよ。
老舗の強みで保守的ニュースソースはガッチリ確保できてるから、
そのままAIに食わせて流せば立派なジャーナリズムだ。SNSへの共感的反応もAIでイケるかもよ?」

……それにAIのほうがまだしもマシ、と感じるくらいアナウンサーの質が低下した。
読み間違いは日常茶飯事、文脈理解せぬブレスも多く、アクセントにも大いに違和感がある。
立派なエビデンスに裏付けられたテキストを音声化するだけならAIでも充分では?

非常に意地悪い見方ですが、高齢者は多かれ少なかれ同意してくれると思います。
タレント的フリートークになると生き生きと喋りだすバカ共に与える薬はありません。
国営放送化して全員国家公務員にしちまったらドーカシラ?とも思うのですが。

『Jazz Tonight』は「らじるらじる」の聞き逃し配信で聴けるはずです。
登録必要なのかな(ちょっと不確か)。金曜くらいまでは聴けるはずです。
ぜひ聞いてみてください。私はベリオの弦楽曲を思い出しました。
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2024/01/16 15:32
お初にお目にかかります、日記広場から馳せ参じました
なかなか読み応えのある日記で、とても面白く拝見しました
生成AI、最近テレビでもよく耳にするシロモノですが、
時代は急速に変化しているようで、喜ばしくもあり、
また僅かながら未来への不安というか懸念も感じます
ボカロというジャンルが成立し、若者の多くに受け居られているのも
私としては仕方がないかと思いつつも、どうにもなじめなくて困惑気味です

『AI制作による二つの弦楽四重奏の同時演奏』、
NHKプラスを登録したらぜひ聴いてみたいと思います

余談ですが、ユースケさんはNHKのニュースで
「AIによる自動音声で~」というのをどう思われますか?
私はいつも、アナウンサーいっぱいいるんだからお前らが読めよ!
(クチ悪くてスミマセンw) と憤慨しておりますw



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