Nicotto Town



Bill Evans『Consecration』


この2枚組、買うのは三度目。二組は知人に貸し戻ってこない。
数あるエヴァンスのアルバムから一つ選ぶなら、私はコレ。
リヴァーサイド四部作ももちろん佳いが、このアルバムは別格です。

エヴァンスが死の数日前まで出演していたキーストンコーナーのライブ。
完全版が出てますが8時間近い。この2枚組は日本編集盤(廃盤)ですけど、
白鳥の歌と評すべきエヴァンスの物凄さが存分に味わえます。

発売直後に聴いたとき、ホントに腰を抜かしそうになった。
蒼白い炎の如きエヴァンスの緩急自在、破綻すら音楽に昇華させる気迫と、
マークジョンソン/ジョーラバーバラのこれまた素晴らしいサポート。

Disk 1 のラスト『Someday my prince will come』聴いてみてください。
あの愛らしい曲を基にチャーミングに始まり、互いの呼吸を測るように、
高まり混然一体となり燃え上がる。何度聴いてもあっけにとられる。

エヴァンスは美しいだけじゃない。いや、言い直そう。
彼の美しさは汚濁や苦悩、絶望を内包するからこその美しさです。
オクスリで体も歯も精神もボロボロ、だが生涯ジャズを追い続けた。

彼の音楽のファンであり、覚悟を共有した二人の若手も称賛に値する。
ラファロ/モチアンを消化し、更に高めたインタープレイは、
ジョンソンとラバーバラがいたからこそ。真の名手です。

曲が始まり、テンポやハーモニーを練り上げるエヴァンスの後ろで、
二人が尋常でない覚悟を示し、全身で音に聴き入っているのも伝わる。
ジャズというものの最高の「ようす」の一例がここにあると思う。

ジャズ聴いたことのない人なら『Waltz for Debby』一択だけど、
ジャス好きが最高のエヴァンスを堪能したいなら、この二枚組。
1989年発売の『Consecration - the last -』入手は容易です。




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