Nicotto Town


エレウシス


見捨てられた国土の2/3

今は首都圏に住んでるけど、私は山村の出身です。

その私も時々実家に戻るわけですが、
その際に昔に比べ違和感を持つことが二つあります。

一つは野生動物が里に下りてくる頻度が上がっていること。
もう一つは川が増水した後に減衰するスピードが早いこと。

そしてこの二つの原因は共通する。

山が荒れていることだ。

山に人が入れば、野生動物は人を恐れるようになる。
木材の成長のために間伐をすれば、低木・下草が増え
保水力が増していく。

そうならなくなった理由は林業で生活しにくくなったから。

木を伐採して製材して売っても経費に満たない。
売れば売るほど赤字になる。
だから、木を生やしたままにしておく。

すると、成長に従って光を遮り、低木・下草が生えなくなる。
山の生き物は食べ物を食い尽くし、里に下りてくる。
(実家周辺の場合は原発事故後、猟師が獲らなくなって鹿が増えすぎたのもある)

やがて表土は剥き出しになり、大雨が降る度に
表土は削り取られ益々保水力が低下する。

結果、洪水が増え下流域の人の命と生活に
大きな被害をもたらしていく。

近年の洪水の原因を温暖化に求める人が多いが
それは的を射た判断ではない。
全く関係ないとまでは言わないが、洪水の主たる原因である
「線状降水帯」は近年の研究で分かった来ただけで
昔から存在していたわけだから。

また、ダムの効能を言う人もいるが
発電とかならともかく、ダムの洪水制御機能など大したことはない。
ダム湖がつくる一部の水たまりと
広大な流域の山の保水力のどちらが大きいかを考えたら
すぐにわかることだろう。

ダムにムダ金使うくらいなら浚渫工事に回した方が良い。
そちらの方が洪水制御には効果的だろう。


そして、ここからがポイントなのだが、
なぜそうなったか、である。

日本の林業が立ち行かなくなってきたのは
高度成長期の北米を中心とした輸入木材の急増から。
即時的な「安さ」「利益」を求める消費者の要求に
常に木の成長を考え「二世代後」を意識する
日本の林業はついていけなかった。

その結果が高度成長期の「二世代後」の今
水害の増加という形で降りかかっている。
山と街の暮らしを経てきた私にはそう見える。

「経済」とは「経世済民」(世を経め民を済う)からとったもの。
一時の利益を追うことを経済の論理と呼んではいけない。
ドラッカーだって利潤追求を目的とすることはダメと言っている。

日本の消費者や経営陣は中国古典に出てくる
己を食らう怪物「トン」のように思える。
利益だけを求める心は、自分を喰らい、さらに自分の子や孫たちに降りかかってくる。

私が「おトク」を前面に打ち出す企業を忌み嫌うのは
こういう「経済の生態系」とも言うべきものを破壊するからだ。

適正価格、適正評価、その上で
「なぜこの産業を守らなければならないか」を説明できる。
50年後、100年後を見据えて思考する。

それが政治指導者であり、経済界指導者であったはず。

増えた水害のニュースを見る度、
利益追求の陰に破壊された山々を思い出す。

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2021/05/23 11:09
☆白星 さん
 今でも田舎では入会地などその名残がありますね。
 神が地域に許した共同の山の恵みの採取地です。

 それを知らない街の人が山歩きで山菜や植物などを
 “盗んで”(本人たちにその意識がないから質が悪い)
 不評を買うことがよくあります。
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2021/05/23 07:14
日記広場から突然の訪問とコメント失礼します。
昔の先住民は、私の土地や私のものという考えが無かったようです。
常に自然に対して畏怖の念をもち、共存して生活するというもの。自分たちの子孫の害になると思われる事はしない。
遠い昔の日本にもあったのかもしれません。




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