Nicotto Town


つくしのつれづれノート


二百三高地

以前書こうとしていた「坂の上の雲」に関連して日露戦争を題材にした1980年の映画「二百三高地」の話。
内容としては日露戦争の旅順要塞攻囲戦の過程を乃木希典陸軍大将(仲代達矢)率いる第三軍の幕僚を中心とする側と召集令状によって第三軍の末端の将兵として徴兵された民間人のふたつの視点で描かれており、特に徴兵された民間人を通じて前線で戦い死にゆく一兵卒の惨状、戦況に一喜一憂する庶民の姿、戦争の悲惨さを事細かに描写した戦争映画の傑作と言っていい作品です。
ちなみに203高地と言うのは旅順要塞内の湾港を見降ろせる高さ203メートルの高台のことでここを制することが旅順要塞の雌雄を決する鍵と最終的にみなされた為に旅順攻囲戦の激戦区となった場所です。

特に徴兵された側の主役ともいえる予備少尉小賀武志(元ジャニーズメンバーのあおい輝彦。ジャニーズグループ第1号、イケメンと言うよりオトコマエ)は元々トルストイを愛読する親ロシアな小学校教師だったわけですが、部下を次々と失うことになる旅順攻囲戦の過酷な戦争体験の中で心底ロシア人を憎み無抵抗のロシア捕虜を射殺するまでに変貌し、戦争というものが常人の精神を蝕むとんでもない行為であることを思い起こさせ大変印象的でした。(もし無事に凱旋したとしても以前のような暮らしに戻ることはできないでしょう。)

…と招集将兵の側を絶賛したですがこの召集将兵の話をまるっきり抜いてしまうと物語の展開・セリフの一言一言が盗作かと思われるくらいに「坂の上の雲」と同じであるため大変複雑な気持ちになりました。この映画でも旅順戦の大量の死傷者を出した原因が乃木希典率いる第三軍幕僚であるとするいわゆる乃木無能論(司馬遼太郎作の「殉死」「坂の上の雲」で有名になりこの映画に影響を与えました。この乃木無能論の可否についてはいまでも大変議論されています。)で描かれているため同じような作風になるのも仕方ないのかもしれませんがあまりにも同じなためこれが公開された当時(司馬遼太郎も存命でありこの映画の内容も当然知ったはずなのではと思います。)問題にならなかったかすごく気になるところです。

いずれにしろ戦争映画の傑作であることには違いないのですが最終的に旅順要塞陥落までに日本だけでも約4万5千人の死傷者を出した(戦死1万5千人・負傷者3万人。ロシア側も含めると総勢10万以上の死傷者を出した)この凄惨な戦いをあまりにもリアルに描いたため(マシンガンで次々となぎ倒される将兵・積み上げられる死体の山)今なら確実にR指定になる相当どぎつい映画と言わざるを得ません。
国内外の戦争映画をそれなりに見てきたと思ってた自分でさえもあまりの凄惨さに最初めまいがしたくらいですから…
ご覧になる時はある程度の覚悟をした方がいいと思う作品です。

出演者
乃木希典第3軍司令官(仲代達矢)
児玉源太郎満州軍総参謀長(丹波哲郎)
伊地知幸介第3軍参謀長(稲葉義男)

小賀武志予備少尉(あおい輝彦)
小賀の恋人・松尾佐知(夏目雅子)

伊藤博文(森繁久彌)
明治天皇(三船敏郎)

その他豪華キャスト多数…





…えー、この「二百三高地」ですが映画製作と並行して製作された連続テレビドラマ版が存在します。(キャストは違うものの戦闘シーンは映画版から流用されてるとか。)
そのドラマ版にビートたけしが補充兵として登場してるのですが突撃シーンでコマネチをしながら突撃して監督から大目玉をくらったもののあろうことかそのシーンが完成作品に使われてたけし自身を驚かせたというエピソードが今でもいろんな番組でたけしが口にしています。(自分は安住アナと一緒にキャスターをしている「情報7days」でこのエピソードを拝見しました。)

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2012/03/07 02:38
つくしさんは、好きが高じて「坂の上の雲」にロケ参加までなさったのですか。すごいっww
それにしても、映画の方、凄惨なシーンには弱いので、やっぱりパスですねぇ^_^;

えっと、私は秘書稼業をしていた事があって、舛田氏と仕事上でお会いしたのも、舛田氏
と当時の私のボスが仕事で関わっていたからです。私にも良くして頂きましたが、今や
記憶の彼方のはずです。まったく売れない漫画家をしていた事もありますが、運にも才能にも
見放され、失敗はまったく人生の肥やしにもなっていない有様です。
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2012/03/05 13:31
この映画の監督は舛田利雄です。

「坂の上の雲」と「二百三高地」とを見比べてみるとリアルさでは時代考証を追及した「坂の上の雲」の方に軍配が上がるのですが(旅順戦の時点で「二百三高地」できている紺ラシャの有名な明治軍服からカーキの軍服に切り替わっているんです。「坂の上~」のロケ参加で一度だけ着たことがあるのですが元々白の夏服を明らかに泥で染めた感じだったのでかなり印象悪かったです。しかも横で衣装担当さんがこの軍服に泥まぶしてるし…)「二百三高地」はゴジラ映画の中野昭慶特撮監督(「爆破の中野」の異名をとるほど派手に火薬を使う撮影を多用した監督として知られ世田谷の東宝撮影所のスタジオをひとつ吹き飛ばしたことがあるという逸話があります。)の手がける特撮部分の画面作りによって(特殊メイクによるメチャクチャになった戦死者の顔・先頭の中体が四散する兵士・堀の中に落ちた大勢の将兵が機関銃によって容赦なく蜂の巣にされるところなど…)ものすごい凄惨な映像になっています。紺の軍服に滴る真っ赤な血のりと特に色合いが強烈なので見た人の中にトラウマになった人もいるはずです。はじめてみたとき気持ち悪くなってしまいました。
ただ戦争を悲惨さを伝える作品としては勝ち戦の映画であるものの映像・ストーリーともに秀逸だと思います。(近代国家の確立を描く「坂の上の雲」とは方向性が若干違うように思います。「坂の上~」は戦争礼賛ではないものの歴史を客観的に描くあまり末端の将兵の細かい描写は希薄な感じがします。)

この手の話にやたら詳しいのはやはり好きだからですね。中退しましたが大学の専攻も19世紀~20世紀初頭の東アジア情勢を専攻してたくらいなので…

それにしても舛田利雄監督と面識があるというのには驚きました。こぶさんはいったいどのようなお仕事をされてきたか凄く気になりますね。
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2012/03/05 12:31
映画「二百三高地」は観た事がありませんが、すごいキャストですね。この作品の監督さんは
舛田利雄氏でしょうか? 舛田氏なら、昔仕事関係でお会いした事があります。飲み会の末席
を汚させて頂いた事もあったり・・・ww 印象としては純粋な、あまり芸能界っぽくない人という
感じでした。

TVの「坂の上の雲」でもかなりすごい戦闘シーンだと思ってましたが、それどころではないの
ですね。ちょっとパスだなぁ~^_^; TVでは乃木将軍がむっちゃ無能っぽく描かれていて、
あとでそれが司馬遼太郎発の乃木無能論だと知ったのですが、映画の方は乃木英雄論かと
思ってました。
やはり共感したものがあると、意識的でなくとも、自分の考えと一体化して同じような台詞を
書いてしまうという事はあり得るでしょうね。昔はあまり著作権がどうとかって発想は多くは
なかったでしょうし。東映の映画だし、まかり通ってしまったのかもしれません。

それにしても、お詳しいですねぇ。勉強になりました。





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