Nicotto Town


つくしのつれづれノート


秋山文学

雪の日に 北の窓あけ シンすれば あまりの寒さに ちんこちぢまる 

いきなり下品で申し訳ありませんが、この句は司馬遼太郎の小説「坂の上の雲」の主人公である日露戦争における日本海軍・連合艦隊作戦参謀・秋山真之が7・8歳の時に詠んだ短歌です。(要するに朝トイレに行くのが面倒なので窓あけて放尿したんですね。ちなみこの人、所構わず立ちションする癖があり、変わった逸話が結構多かったりします。) 




子供の頃の秋山真之はガキ大将でありながら文学好きで俳句や漢詩(こちらは武家教育の基本だったので明治初年なら当たり前かもしれませんが…)などを習ってたみたいで、その当時の腕前は親友である俳句・短歌の中興の祖と言われる正岡子規を凌駕していたそうです。秋山真之は上京後兄秋山好古に養われて書生をしていましたが、学費問題や書生時代に清水則遠という正岡子規に並ぶ親友の病死(清水則遠の死に関して正岡子規は大変ショックを受けていたようで、清水則遠の死後遺族に充てた手紙が現存する最も長い子規の手紙だそうです。)を機に将来の模索を本格化させ、東京予備門を退学し海軍を志すことになるのですが、海軍に入った後も秋山真之による名文が生まれ、海軍内では「秋山文学」と呼ばれていました。 



もっとも有名な一文として秋山真之が日本海海戦前に大本営に打電した電文 

「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」 

があります。これは他の参謀が起草した 


「敵艦見ユトノ警報ニ接シ、聯合艦隊ハ直二出動、之ヲ撃滅セントス 」

 の文に真之自身が「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」を付け加えたものなんですが、この「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」には、 

「高波で当初予定した駆逐艦隊の襲撃が不可能であり(真之は艦隊決戦前に駆逐艦襲撃で敵主力艦の消耗もしくは頭数を減らすつもりだった。)、それを諦めて初めから主力同士の艦隊決戦を挑む。…が高波である為荒波対策が施されてない敵艦隊にとって不利であり、晴朗な天気の為見晴らしが良く敵艦隊の取り逃がしが少ない。極めて連合艦隊に有利である… 」

という意味が込められており、少ない文字数で沢山の情報を伝達することが要求される電報文の模範のひとつになっています。   



司馬遼太郎は日露戦争終結後に連合艦隊解散時に秋山真之が起草した「連合艦隊解散ノ辞」というものに対して、近世から近現代の変遷の中で劇的に変化した日本のかき言葉に多くの影響を与え規範となった文章のひとつとして、夏目漱石や正岡子規に並んで称賛しています。メチャクチャ長いので全部は書きませんがこの文章の最後にある、 

「神明はただ平素の鍛錬に力め(つとめ)戦はずしてすでに勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、一勝に満足して治平に安んずる者よりただちにこれをうばふ。」 

の一節は多くの人に読んでもらいたいと思うような自分の好きな文章のひとつです。この「連合艦隊解散ノ辞」は各国で翻訳されたそうですが、特にアメリカのセオドア・ルーズベルト大統領が感動して翻訳文をアメリカ陸海軍の全域に配布しました。漢文の格調を保ちながらヨーロッパ式の論理を取り入れているため、翻訳が比較的簡単だったそうです。
 


 秋山真之は大正七年(1918年)に49歳で病死するわけですが、(よく日露戦争で精神をすり減らしたために精神を病んで健康を害し死んだようにいわれるのですが(精神を減らしたのは本当だと思いますが…)、直接の死因は病院嫌いで盲腸の治療をサボって腹膜炎にこじらせたのが原因です。兄秋山好古もフランス留学中に発病したチフスを医者に見せずに自力で直してしまいましたが(おかげでつるっ禿げになった。)、この兄弟の病院嫌いには呆れます。)その際に 

不生不滅 明けて三羽の 鴉かな

 という辞世の句を残して世を去ります。この三羽の鴉というの秋山真之本人と正岡子規と上記の清水則遠のことを表しているという人がいますが、もしそうなら真之は生涯文学好きだった書生時代の気質を貫いていたのかもしれませんね。  



 ※清水則遠に関する記述に関してはファンサイト「Z旗 坂の上の雲マニアックス」に寄りました。

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2013/12/06 20:10
こんばんは。
坂の上の雲は、小説ですよね。
ちょっと忘れかけてました。笑
いろいろ教えて下さりありがとうございましたm(__)m
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2013/12/05 17:25
朱或様へ…司馬遼太郎記念館に行ったときに小説中東銃する歴史人物の数は古今東西問わずした1300人余りが登場するのだそうです。
そういった歴史人物を偲ぶも面白いですが、それを置いといてどのようにして明示や日露戦争が展開していったのかをかぎ取るだけでも面白いですよ。

ただあくまでも小説であり、歴史書のように鵜呑みにしてしまうのはさすがにどうかとは思いますが、これをきっかけに参考資料を手にとって突っ込んでいくとさらに奥深くなると思いますよ(^-^)
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2013/12/05 17:15
こんにちは。
…エキストラ出演!すごいですね。

出番、あまりないのですか~ちょっと残念です。
日露の前までは秋山兄弟と子規で出番を三等分してる感じだったのでこの後は秋山兄弟しか出番がないのかと思ってしまいました。笑
登場人物、多数出てくるのですね。私、歴史詳しくないのでついていけるか心配になってきました;

でも、この作品で私の戦争に対する考え方が変わりつつあるので時間がかかっても最後まで読みます。
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2013/12/04 18:40
朱或様へ…大分前に書いた記事へのコメントわざわざありがとうございます。
「坂の上の雲」についてはドラマ版にエキストラ参加するほど大好きな作品なのですが、
実は物語の大半を占める日露戦争の話になってから主人公である秋山兄弟の出番が主人公とは思えないほどめっきり減っている感じなのです。
両者ともそれぞれ参謀・旅団長と上級将校の地位にあるのですが、日露戦争を全貌を描くうえで常に話の中心に据えることが不可能なのです。日露戦争の話になってから秋山兄弟並みに(もしくはそれ以上に)活躍する登場人物が多数出てきます。

ただ秋山兄弟は両者とも全体的ではないにしろ局面的に戦争の勝敗を左右する正念場で業績を残している人物なのでこの小説の主人公として申し分ないとは思います。
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2013/12/04 18:17
はじめまして。
坂の上の雲、私も読んでます^^(まだ途中なのですが…)
途中まで読んで、真之ってトイレネタ多いな~と思ってました。笑
私はまだ日露戦争がはじまったばかりのところ(旅順)までしか読んでいないのですが、
このあとは真之の出番が多くなるのですね~。
個人的に好古の活躍に期待してます。
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2012/04/12 13:13
ここに書いても平気かな?

つくしさんあまりにも辛いです。

しんどいや辛いという言葉を通り越してます。

ここにきて

本当に「自殺」したい人の気持ちがわかったきがします。

これから私はどうすればいいでしょう?

(無茶なこと言ってごめんなさい)




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