Nicotto Town


つくしのつれづれノート


八犬伝NOW!!

以前書いた「南総里見八犬伝」ですが、刊行当時知らぬ者はいないとされるほど大ブームになった日本最長の古典であり、当然現在に至るまで多くの小説・漫画・映画・ドラマなどが世に出たのですが、そのほとんどがいかにも総集編だったり、大幅アレンジしたものばかりで、原作の内容や面白さを把握できないものばかりなのです。

それ故に読まれざる傑作とまで言われる始末…
かといって原作は古典だから解読状態になって読むのしんどい…
…ということで現代版「八犬伝」関連作品について特集します。!!

小説などは安西篤子や山田風太郎・鎌田敏夫などそうそうたる面々が書いてはいるのですが、皆それぞれの特色でもって小説化している為原作の面白さを継承したものとはいえません。(安西篤子版は伏姫・玉梓・浜路・船虫など八犬伝の女性キャラを中心に描かれている。)

そういった作品群の中で最も原作に忠実とされている作品として、「南総里見八犬伝」の入門書としておススメなのが碧也ぴんくの少女漫画版「八犬伝」です。
この漫画はOVA「THE 八犬伝」(原作を大幅にアレンジしているとのこと。アニメファンの中では高評価されているアニメなのだとか…)のタイアップとして連載が始まった作品であり、最初はOVAに準ずるアレンジ作品になるつもりだったみたいですが(冒頭部分にはそれを匂わせる描写があります。)、この漫画を描くにあたり碧也ぴんくは古今東西の「八犬伝」関連書籍並びに作品舞台となった室町関連の資料を徹底的に調べた結果、OVAタイアップという枠組みを大きく超えた原作をベースにしてかつ原作以上に各キャラクターに感情移入しやすい作品として結実しました。
原作の描写は現代人の感覚では感情移入しにくいところがあって判りづらく、いきなり現代語訳や抄訳に挑戦しても失敗するのがオチです。碧也版はあらゆる「八犬伝」関連作品の中で物語を把握するうえで一番読みやすいです。
さらにこのおまけページがめちゃくちゃ豪華!!
碧也ぴんくが作品を描く為に調べた中世の生活風俗や「八犬伝」関連資料解説などが掲載されており(他に八犬士を主役にしたもしもシリーズなるコント漫画があります。)、歴史好きにはたまらないおまけとなっております。

「八犬伝」を読むならまずこの碧也版を自信を持っておススメします!!

ここを皮切りに抄訳などとレベルを上げていくのが一番だと思います。
(抄訳版としては白井喬二訳の河出文庫版と山田野理夫訳の太平出版社版がおススメです。なんといっても読みやすい。)



映像作品としてはさらにシビアであり、ほとんどが原作の総集編だったり(大河ドラマ総集編よりも酷いものが多い)、大幅アレンジの原型をとどめていないものばかりなんです。
一番知られているは薬師丸ひろ子・真田広之主演の角川映画版「里見八犬伝」だと思いますがこれも原型をとどめておらず、それどころか八犬士中三人が数合わせの影が薄い存在となっています。(犬飼現八に至ってはドラクエのモンスター・さまようよろい状態で素顔が判らない…)

その中で最もおもしろいと思われるのがNHKの人形劇「新八犬伝」(73年~75年放送)です。
この作品は大ヒット人形劇「ひょっこりひょうたん島」以降人気が低迷していたNHK人形劇を建て直した中興の祖ともいえる作品であり、その人気から「南総里見八犬伝」の
原作(原作の流れに沿ったののアレンジされている。)だけでは間に合わず、曲亭馬琴のデビュー作「椿説弓張月」(源為朝が保元の乱後、琉球に行って琉球王になるという伝説をもとにした話。)をも組み込んで訳に年の放送となって大ヒットしました。
…が残念ながらこの「新八犬伝」はこの二年分464回分の放送中4話しか現存せず(内1話分は去年発見されたもので総集編的内容だといいます。)、この人形劇の完全版を観ることは今や不可能となっています。(他に人形劇完結後に製作された映画版「新八犬伝 芳流閣の決闘」という総集編にあたるものがあり、DVDがで出たものの現在絶版だとか…私つくしはこれ持ってるのですが、芳流閣の決闘場面は迫力があります。)
ただ家庭用ビデオデッキが普及してないものの、録音テープに収録していたファンが多く存在していたようであり、そのうちのいくつかがYoutubeなどの動画サイトでアップされており、現存映像以外にも当時の雰囲気を追体験することができます。
この人形劇のナレーター(というかナビゲーター)は坂本九なのですが、その語り口は講談調で歯切れがよく、見れば見るほど続きが気になってしょうがなくなりそうな当時のファンの気持ちが現存音声などからうかがうことができます。そしてこの「新八犬伝」の主題歌「夕焼けの空」は「上を向いて歩こう」「見上げてごらん夜の星を」「明日があるさ」に引けを取らない名曲だったりします。

ハッキリ言って坂本九が「新八犬伝」の最大功労者といっても過言ではありません。

ちなみにこの「新八犬伝」は放送時の脚本をもとにした小説版が存在し、最近再版されて読むことができます。(少々割高だが…)この人形劇の結末は玉梓が怨霊を成仏させた後八犬士が玉に込められた犬となって恋人や仲間たちを残したまま空の彼方に飛び去っていくという衝撃的なラストであり、強烈です。


映像作品の最高傑作が人形劇というのも情けない話なのですが、その他のドラマ映画なんかはこの長い原作を2~4時間の短時間に収めようする為駄作にならざるを得ないのです。一番新しいタッキー主演のドラマ版「里見八犬伝」も演出は面白いものの総集編とアレンジのちゃんぽん的結果になってしまいました。(八犬士の中に押尾学がいたのには驚きましたが…)
正直言って映像作品として傑作を作る為には少なくともNHK大河ドラマ一作分の容量がないと無理だと思います。同じく「水滸伝」を源流としている武侠小説の代表格である金庸の「射鵰英雄伝」のドラマ版なんかをみても、大河ドラマ並みにして初めて完成した感があったわけで…

小説なんかも「水滸伝」「三国志」を書いた北方謙三が似たような要領で書いてくれたら面白そうなのですが…



大分長くなりました。とりあえず以上です。
たぶんまだ「八犬伝」関連書くと思います。
…というわけで

本日はこれまで!!
(コレ、「新八犬伝」の坂本九の締めの決めゼリフなんです。)

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2018/11/05 17:54
ゆりか様へ…「八犬伝」に限らず冒険活劇ジャンルは総じて大好きなんですよね(^_^)「水滸伝」は読んでないんですが同ジャンルの中国の金庸の武侠小説なんかもドラマ版共々楽しんでました。(金庸もついこないだ無くなっちゃいましたが…)

「八犬伝」以前に近代以前の小説読み物の扱い方が今と全く違うため原本や現代語訳をそのまま読んでも面白く無くてとても読み進めないんですよね。碧也ぴんくの「八犬伝」はホントにわかりやすいです。この人元々上記のNHK人形劇「新八犬伝」のファンということもあってこだわりが半端なく、漫画を描くために使った八犬伝関連書や中世時代考証資料をおまけで紹介してくれてるので「八犬伝」の教科書としてまさにうってつけです。(まあ室町の時代考証自体がマイナーなためうっかり鉄砲や天守閣出しちゃったりしてますがwww)



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2018/11/05 07:27
おはようございます、みかささん。
遊びに来ましたー♪前回の八犬伝も読ませて頂きました。

詳しく書かれていますね。
何となく物語がわかったような…とりあいず、長い長いお話なんだということがわかりました。ドラゴンボールの元ネタだったとはびっくりです!
これだけ長いと、大河ドラマでも全部やるのも厳しそうですね~。
その少女漫画の八犬伝が読んでみたくなりましたよ(^^♪
みかささん、八犬伝大好きなのですね!熱い想いが伝わってきました。
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2012/07/14 22:43
ペッチ様へ…フィルム作品はNHKをはじめどの放送局も残りがいいらしいです。なぜならば撮影したフィルムは同じものを使って撮り直しができないからです。
現存が少ないのはフィルムではなくビデオ撮影のVTRでありなんです。当時使っていた2インチビデオテープ一本の値段がサラリーマンの平均月給の3カ月分に相当する為に一度製作した作品の上に新しい番組を重ね撮りせざるを得なかったのです。NHK大河ドラマもNHK人形劇もこの部類に入る為60・70年代の番組の現存映像が非常に少ないのです。
NHKとしては最新技術を駆使して世間をあっと言わせる番組を作るテレビマンとしての意地があったのだと思いますが、その代償はあまりにも大きかったといわざるを得ません。
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2012/07/14 15:06
NHKは、昔のフィルムが残ってない作品多いですな。
マルコポーロとか、キャプテンフューチャーとか。
あの杜撰な管理体制、ナントカして頂きたいものです。




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