隠し砦の三悪人とスター・ウォーズ
- カテゴリ:映画
- 2012/11/09 21:47:18
この間リメイク版「隠し砦の三悪人」をダメ出ししたので、口なおしというわけではないですけど今回は黒澤明の原作版「隠し砦の三悪人」(58年)を原作版「隠し砦)を土台にして誕生した「スター・ウォーズ」(77年。いわゆるEPⅣ)を絡めて紹介します。
とりあえず前とかぶるかもしれませんがあらすじ
隣国山名に滅ぼされた秋月家を再興する要となる埋蔵金と亡国秋月の雪姫(上原美佐)を隠し砦から同盟国の早川領へ移そうと考えていた秋月侍大将・六郎太(三船敏郎)は、偶然埋蔵金の一部を発見した強欲な百姓太平(千秋実)と又七(藤原釜足)の早川領への脱出アイディアを元に、大胆にも敵国山名領突破を試みる。
六郎太・雪姫・太平・又七に途中身売りから助けた娘(樋口年子)の5人で秋月家の埋蔵金をあの手この手で運び出すのだが、その前に山名の侍大将で六郎太の盟友田所兵衛が立ちふさがった。
果たして埋蔵金の運命やいかに…
特撮が見事なリメイク版と違って黒澤明の原作版は全て実景であり、観やすいシンプルな画面作りなので迫力が全然違います。(最近は凝りに凝った映像で逆に付いていけない映画ドラマが多いように思います。)
特に乗馬スタントがスゴイ!!
中盤の馬にまたがってのチャンバラは三船敏郎が危険なスタントをスタントマンなしで演じているということであり、軽快な音楽と相まって手に汗握る場面でした。クライマックスの馬に乗っての山名突破も大迫力です。
そして最大の魅力は百姓二人組の太平と又七の漫才みたいな展開。調子のいい時はいがみ合い、ちょっとでもヤバくなったらふたり型寄せてうずくまっているような身代わりの速さが笑えます。長身の千秋実と短身の藤原釜足の配役の組み合わせが絶妙です。なんでもこの二人の元ネタは中世コントともいえる伝統芸能狂言の太郎冠者と次郎冠者(主人をからかうボケとツッコミ役)なのだそうです。この二人なしでは「隠し砦」の面白さは成り立たないですね。(なので松潤と宮川大輔の配役で二人組が改変されてしまったのがとても残念でした。)
そんな「隠し砦」を土台にしたのが77年の「スター・ウォーズ」(EPⅣ)。前のブログで述べたとおり上記の太平・又七がC3POとR2D2のモデルになっていたり、正式に原作とは明言されてないものの基本ストーリーの骨組みは全く同じです。
EPⅣのあらすじ
時は帝国軍と反乱軍が争う宇宙戦争のさなか。星をも破壊するの帝国軍宇宙要塞デススターの設計図を反乱軍のレイア姫は、R2D2とC3POに託し仲間の元に届けようとする。途中デススターに迷い込むも、敵をかいくぐって反乱軍の秘密基地に到達しデススター破壊に結び付ける…(すみません!!説明するのにややこしくなるのでルーク・オビワン・ハンソロをあらすじから省きました(笑))
上記のあらすじの舞台の宇宙→戦国時代・デススター設計図→秋月埋蔵金・デススター→山名領と置き換えたら両映画の類似っぷりは判りやすいと思います。
特にR2D2TろC3PO砂漠の惑星タトゥーインに逃げのび、けんか別れするも合流してルークの元に引き取られる冒頭の展開は、「隠し砦」の展開と全く同じなんです。
他にもクロサワ映画をリアルな作り込みを参考にして、セットや小道具の汚しを徹底化して生活感丸出しにした結果、黒澤明本人から絶賛されることになりました。
「スター・ウォーズ」サーガというと宇宙戦争を背景にジェダイとシスの善と悪の戦いが描かれる壮大なスケールなのですが、莫大な収益で他社に依存しない製作体制を築いてるためジョージ・ルーカスの自主製作映画なんて揶揄されており、その影響か他の個々のストーリーは全て最初のⅣの依存度が高く、Ⅳ絡みないと「スター・ウォーズ」サーガは全く面白くありません。(シリーズものというのはそういうものなのでしょうが、Ⅰ~Ⅵまであるやつを、ストーリー順に観て面白く感じれないのがちょっとさみしい…)
でも「スター・ウォーズ」が巨大ヒットシリーズにしたⅣの骨組みとなっている「隠し砦」を生み出した黒澤明の偉大さは計り知れないものがあります。
世界の巨匠といわれるだけのことはありますね。
≪追記≫
これ最近三船美香(三船敏郎の娘)が番組でよくネタにしてるので知られていることですが、「隠し砦」の主演・三船敏郎を「スター・ウォーズ」のダースベイダー役にオファーを受けていたそうです。結局断った為ダースベイダーにマスクがつくことになるのですが、もし三船敏郎がダースベイダーになっていたら「スターウォーズ」のヒットもありえなかったかもしれませんね。(ちなみにⅥのラストに登場するダースベイダーの素顔役にもオファーされたそうですが断ったとのことです。)