Nicotto Town


つくしのつれづれノート


雲のむこう、約束の場所

先週、新海誠監督のアニメ「秒速5センチメートル」にハマったため、その前に作られた「雲のむこう、約束の場所」にも手を出しました。「秒速~」の方が各20分程度の短編連作だったのに対して、「雲のむこう、約束の場所」は堂々90分の長編アニメとなってます。


以下はあらすじ
舞台は北海道がユニオンという大国に占領された日本が南北分断された世界。北海道と呼ばれていた蝦夷には謎めいた「ユニオンの塔」が天高くそびえている。
中3の浩紀と拓也はそのユニオンの塔にたどり着くことを夢見て「ヴェラシーラ」と名付けた白い飛行機を作っていた。そこにふたりが憧れている同級生の少女・佐由理が加わり、ヴェラシーラで佐由理を連れていくことが3人の約束になった。

約束は佐由理が突然姿を消したことで果たされないまま、3年が過ぎた―
佐由理は謎の睡眠障害でずっと眠り続けていたのだ。しかも原因はユニオンの塔にあり、彼女の覚醒は世界の存亡に係わるという…

佐由理が姿を消した後、それぞれの道を歩んでいた浩紀と拓也は、佐由理とユニオンの塔の関係を知り、再びユニオンの塔を目指す。
折しもユニオンとアメリカが対立し津軽海峡で戦端を開いた緊迫した中
ヴェラシーラは魂の抜け殻となった佐由理を乗せて津軽海峡を越え、かつての約束の場所を目指して飛び立った…



う~ん、設定がややこしい為にあらすじが要約出来なかったのが悔しいです。
コレ、巷にあふれてるアニメの演出だったら途中で観るのをやめてたと思うのですが、新海監督独特の空間描写(透き通った風景・生活感のある部屋)と語り調で淡々と進むストーリーに天門の音楽が組み合わさってるのに惹きつかれて、途中で止めるのを許さなかったです。

なんといってもクライマックスのヴェラシーラが青空をゆくシーンが爽快でした。
透き通った青空にくっきりと映る白いユニオンの塔とヴェラシーラの光景がすごい幻想的で、目に焼き付いて離れません。
空を飛ぶ光景ってジブリの「ラピュタ」をはじめとする宮崎アニメの定番だったりするんですけど、新海監督独特の綿密かつ繊細に描かれたこのクライマックスは宮崎アニメで同じものを再現しようとしても絶対に敵わないと思います。(ジブリアニメ「耳をすませば」の空を飛ぶ光景なんかが印象的でしたが…)
「秒速~」もそうだったのですが新海アニメってストーリーに深入りするよりも映像と音楽で楽しむってスタイルが一番いいのかもしれませんね。(自分は「秒速~」のストーリーにのめり込み過ぎて最初鬱になりましたもん。)


今そういったばかりですが、やっぱりストーリーについても書きます(笑)
ややこしい設定にがめんどくさいように思えるんですけど、ずっと眠り続けているお姫様を王子様が助けに行くというグリム童話の眠り姫を、新海テイストにしてる印象がありますね。(ちょっとジブリの「ラピュタ」の要素も入ってるような気がします。)
クライマックスに佐由里は相思相愛の浩紀が操縦するヴェラシーラの中でめでたく長い眠りから目を覚ますことになるんですけど、約束の場所・ユニオンの塔の消滅や眠ってる間に感じ続けてていた浩紀を求め続けていた気持ちの喪失感で涙を流してしまうところでラストを迎えるのは本当に新海アニメらしいですね。

中盤の浩紀が佐由里の意識と邂逅して「佐由里のことをずっとそばで守る」って誓う場面があるのですが、佐由里が目を覚ました後のふたりは「眠り姫」のお姫様と王子様のように幸せになりました…という風にはきっと行かないんだろうなあ…とせつなく思いました。
思春期の喪失感がみずみずしく描かれている…そんな印象が強く残りました。


ちなみにCVについては主人公浩紀の声に吉岡秀隆を起用したのは微妙に思いました。確かにせつない語り調の役柄がすごいに合う役者さんなのですが、その吉岡秀隆の代名詞とも言える「北の国から」の純や「男はつらいよ」の満男(寅さんの甥。シリーズ最後の6作は吉岡演じる満男が実質主役になっています。)のイメージがあまりにも強すぎて新海アニメの雰囲気に声がしっくりとこなかったのがすごく残念でした。


今回の「雲の向こう、約束の場所」は「秒速~」のようにDVD手元に置きたい!!ってくらい絶賛してるわけではないんですが、新海監督の画集やサントラとかが欲しい手強く思う作品でした。
まだ「ほしのこえ」と「星を追う子供」が未見なのでそちらの方も引き続き観ていこうと思います。





≪追記≫
この間書いた「秒速5センチメートル」の新海監督自筆の小説とコミカライズ版を読みました。アニメの最後の踏切でのシーンについての解釈が貴樹にとって救いの見いだせるラストだったので多少ホッとしました。
コミカラズ版の失恋したけど貴樹のことが忘れられない花苗がアニメのラストの後に東京まで出向いて貴樹を探しに行くというラスト(花苗も貴樹と同じ気持ちを抱いていたんだなあ…)は流れ的に蛇足とも言えるんですが(アニメでこれやったら酷評するだろうなあ…)、作中で人気が一番人気っぽい花苗のその後が描かれていたのはうれしいですね。

まだ別バージョンの小説があるということなのでそちらの方も読んでみたいと思います。

アバター
2012/11/18 23:09
なぎさ様へ…「秒速~」の小説新海バージョンと漫画版でラストの踏切のシーンにそれなりの納得がるいたのがよかったです。もう一バージョンの小説は1話が明里の視点・2話が貴樹の視点で綴られているということなので、そちらの方もすごく気になります。

どの新海作品も透き通った風景描写が大変見事ですよね。
アバター
2012/11/18 22:48
秒速の小説バージョンもあるんですね。知りませんでした。

『雲の~』は内容ほとんど覚えてませんでしたが、つくしさんのブログ
読ませていただいて、空に白い飛行機が飛んでいくのだけは
よみがえってきました。
セリフがない、ああいう描写が新海監督は綺麗ですよね。




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