冬にピッタリな小説というとロマンチックな恋愛ものではなく厳しい冬山を舞台にした山岳小説くらいしか思い浮かびませんｗｗｗ

映画「八甲田山」で大変有名な新田次郎の「八甲田山死の彷徨」（日露戦争開戦準備で明治陸軍が行った八甲田山雪中行軍訓練中に遭遇した日本史上最悪の遭難事件を題材にした小説。）そは自分の抱く冬の小説の代名詞的なのですが、
すでに何度もこのニコットで記事にしてるので今回は取り上げず…


代わりに上げるのが井上靖の山岳小説「氷壁」です。
こちらの方は冬山登山を舞台にした1957年に発表された当時話題になった井上靖の名作小説です。



以下はストーリー
新鋭登山家の魚津恭太は親友小坂乙彦と冬の前穂高の登山に挑むが、氷壁を登る途中ザイルが切れ小坂が滑落死していまう。
絶対に切れるはずのないザイルが切れ、しかも小坂が不倫関係に悩んでいたこともあり様々な憶測が流れ世間を騒がすことになった。
やがて事故原因の追及の為のザイルの性能実験が始まるが、そこで魚津は小坂の不倫相手であり魚津にも接近していく若い人妻八代美那子・ザイルを開発した美那子の夫八代博士・魚津に一途な想いを寄せる子坂の妹かおるをはじめとして事故に関係する様々な人間・社会関係の織りなす複雑な渦の中に巻き込まれていく…




この小説は1955年に実際に起こった当時絶対切れないとされていたナイロンザイルの切断による登山死亡事故とナイロンザイルの安全性を問う論争を元にして書かれた社会小説の一種なんですが（原因はザイル自体の欠陥にあるということが事故当事者の20年近い主張の末認定され、後の製造物責任法へとつながっていく。）、
お堅い小説ではなく、上記のとおり魚津・美那子・八代博士・かおるの複雑な愛憎劇が展開される為娯楽小説としてもスゴイ面白いと思います。
特に魚津を巡る複雑な恋愛関係を展開するメインヒロインの妖艶な美那子と清いかおるのキャラクターが正反対で、物語ラストの二人が心情描写が全く対照的なのが印象的です。

この小説、大学の在学中にＮＨＫでドラマ化されたのを機に読んだのですが（主演玉木宏と只今政界で悪名高くなってる山本太郎）、ドラマが小説が描かれた50年代から現代に代わり、登った山も前穂高からヒマラヤのＫ2へ、事故原因もザイルからカラビナに変更され、しかも物語後半は当時ブームになっていた唐沢寿明のドラマ「白い巨塔」に便乗したかのような法廷闘争が描かれるなどストーリーとしてメチャクチャだった為、
余計原作の小説にハマったのを覚えています。



…って、あれ？冒頭にロマンチックな恋愛ものの冬の小説を読んだことないって書いておきながら思いっきり矛盾してないか、コレ？ｗｗｗｗｗ












これを書いてる途中に「氷壁」と同時期に製作された雪山を舞台にした東宝の怪獣映画「獣人雪男」を思い出しました。この映画は部落差別表現などがある為に封印された幻の特撮映画となっております。原作は「ゴジラ」ストーリー原作者・香山滋であり、刊行されている小説版「ゴジラ」関連作品として読むことができます。
この小説自分の本棚にあるので機会があれば記事にしてみたいですね。