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つくしのつれづれノート


新海誠特集その4 秒速5センチメートル

先週日曜の下北沢トリウッドの新海誠特集6作品中特に目玉になった作品がこの「秒速5センチメートル」だと思います。
現にトリウッドの新海誠特集の当日チケットの中では前作「言の葉の庭」と共に真っ先に無くなった作品であり、
しかもラストの雰囲気が変わった「言の葉の庭」と違い「ほしのこえ」などの非常に切ない典型的な新海アニメであるため
現時点ではこの「秒速5センチメートル」こそが新海アニメの代表作なんだろうなと思っています。


この「秒速」は短編3つで構成されている1時間程度の連作作品であり、
それまでの「ほしのこえ」「雲のむこう」のようなSF設定のようなものを排除した通常の世界観の中で誰もが体験したであろう恋愛や葛藤をそれぞれ描いている為、
大変シンプルで切ない作品になっており
そのラストの展開の為に史上最強の鬱アニメと喧伝されている作品でもあります。

私ミカサ自身もこの「秒速」をきっかけに新海アニメに憑りつかれた一人であり、この「秒速」への思い入れは新海アニメの中で最も強いものがあるわけなんですが、
それは後述するとしてまずは大まかなあらすじについて


1.「桜花抄」…小学生の時、東京でいつも一緒で両想いだった貴樹と明里だったが、小学校卒業と同時に明里は栃木に転校してしまう。それ以降文通のやり取りを続けるが今度は貴樹の鹿児島の種子島への転校が決まった。
「もう二度と会えなくなる」という思いから明里に会う約束をして貴樹は栃木に向け電車を発したのだが、大雪によってダイヤが大きく乱れ時間だけが無情に過ぎていく…

 2.「コスモナウト」…種子島の高3の少女花苗は中2の時に東京から転校してきた貴樹をずっと一途に恋い焦がれている。貴樹の東京への進学を知った花苗は趣味のサーフィンのスランプを解消した暁に貴樹への告白を決意したのだが、告白の瞬間貴樹のいつも見ているものの正体を感じ取った花苗は…

3.「秒速5センチメートル」…月日は流れ、東京でひたすら前へ進もうとする貴樹だったが、日々仕事に追われて疲れ果て葛藤を続ける日々。その末にずっと自分を突き動かしていたものはかつて明里と最後に会った時に感じとったものだったことに貴樹は気付く。
一方明里は結婚を控え新しい人生をスタートしようとしている…
物語は大人になったふたりがこれまで過ごしてきた生い立ちを交錯させながら、かつて一緒に登校していた通学路の踏切ですれ違うところで幕を下ろす。


いや~解りやすくせつない‼
現実が舞台故に、リアルで生々しすぎる!! 



初めてこれを見たのは数年前なんですが、淡々とストーリーが重なるにつれどんどん切なくなって胸が締め付けられ(…というより心がえぐられました。)、ラストを迎えたときにはショックで涙ボロボロだったのをを今でも思い出します。
あの時そのショックが長引いて二週間ほど寝込んだんですよねwww

というのも私ミカサの生い立ちそのものが貴樹と重なるものがあって(といいながらも自分は貴樹の様にモテた経験はないんだけどww居着くことのない場所での初恋や友情を経験している)、
貴樹の負の部分がまるで鏡で自分を見た感覚になってしまい
当時精神状態も最悪だっただけにトラウマになってしまったんですよね。
なので初見後も「秒速」を観る機会は幾度もあったのですが、それでも自分の感情に直接リンクする1話「桜花抄」と3話「秒速5センチメートル」はトラウマでずっと観れないでいたんですよね。

…以上の様に私ミカサと「秒速」を皮切りにした新海アニメのファーストコンタクトはもう凄惨極まりない最悪の状態だったわけで到底当時の自分の心情としては到底受け入れられないものがあったわけですが、
納得できないからこそに自分なりに答えを見出したいという思いが当時から強くあった為、
他の新海アニメだけでなくそのノベライズやコミカライズなどのメディアミックスを揃え、
さらにそれでも飽き足らずに似たような短編の恋愛小説や漫画などを貪るようになるなど、

結果的に気が付いたら新海アニメに憑りつかれるようにハマっていたわけです。
いろいろ複雑な過程を経て今に至っています。



…で今回トリウッドの新海誠特集で久々に全編観ることになったわけですが
結果を言ってしまえば
周りからすすり泣く声が聞こえてくる中で清々しい気持ちでラストシーンまで見ていましたwww
以前の感想も記事にしてるのでぜひ見比べてみてください↓
http://www.nicotto.jp/blog/detail?user_id=1032798&aid=45503455

初見時の反応とは全くの真逆…いったいなぜ???www

冷静に考えてみたら貴樹と明里が引き裂かれていく様子って普通に誰もが体験してることであり、それをむやみにラストの二人の明暗を露骨に交差しなければそこまでエグイ鬱アニメと呼ばれなかっただろうな…
と今はそう感じてるわけなのです。

初見時ラストシーンの踏切で二人がすれ違った後貴樹がすごい清々しい笑顔をしているのが全く理解できなかったのですが、
あれは無理までして自分を突き動かしていたものの正体に貴樹が気付き、そこをリセットして前に進みだそうと決意したからなんだと最近妙に納得しています。(「言の葉の庭」のトークショーに参加した際に新海監督自身が言っていたことでもあり、小説でも同様のことが描かれています)、
きっと踏切ですれ違った後に消えた明里は貴樹にしてみればずっと呪いの様に抱えていたものの象徴・幻だったんだろうなあ…


そんな初見とは真逆な感想に変化したのは
きっと今の自分が当時の最悪の状況を脱して更なる飛躍を目指して新しい一歩を踏み出そうとしているだからなのかもしれません。
まさに心境が変化したからこその感想の変化なんだと思います。

今後も節目ごとにこの作品を全編観返してまた違った心境になるのかもしれません。
正直言って自分にこれだけ影響を与えているアニメってほかにはないですね。ほんとにオドロキです。
そういう意味では今後も「秒速」に対する思い入れの深さは自分の原風景と重ね合わせているので今後も変わることがないのだともいます。
そんなわけでこの作品はもはや私ミカサにとってかけがえのない大切なものになってます。






大分字数使っていますが
最後に「秒速」のメディアミックス作品を紹介します。

「小説・秒速5センチメートル」
…新海監督自身による小説版。アニメほとんど描写のなかった3話の貴樹の彼女をはじめとしてアニメでは感じ取りづらい描写を活字にしている為、大変わかりやすいと思います。もともとメディアワークスのMF文庫ヴィンチで刊行されたものですが、「君の名は。」公開に合わせて角川文庫でも刊行されたので一番手に入りやすいです。

「秒速5センチメートル one more side」
…メディアワークスで刊行された加納新太によるノベライズ版。(「ほしのこえ」「雲のむこう」に続きまたこの人www)アニメ版とは逆の視点で描かれており「秒速」をさらに深く読み解くうえで助けになると思うのでおススメです。

漫画版「秒速5センチメートル」
講談社で刊行された清家雪子作画のコミカライズ版で全二巻。特筆すべきは漫画のラストに時系列的に3話後のずっと想い続け悩み続ける「コスモナウト」のヒロイン香苗が貴樹に会いに上京する様子が描かれています。香苗は貴樹や明里と比べても人気が高い為?(どう見ても「コスモナウト」以外がしんどくて見れないんだろうなwww)、「秒速」で打ちひしがれた方にとっては大変救いになるかもしれません。





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