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つくしのつれづれノート


入れ替わりものの原点 「転校生」トリプル!

昨今一躍今年最大のヒット作となっている「君の名は。」で描かれている入れ替わりものの原点ともいうべき映画が大林宣彦監督の映画である「転校生」です。
今回は原作小説版と大林監督が手掛けたオリジナル版とリメイク版の計3作品の紹介になります。



まずは3作品に共通する大まかなあらすじ。↓

斉藤一夫と斉藤一美はふとしたことをきっかけに心と体が入れ替わってしまった!!とりあえず二人は入れ替わった体のまま生活を始めることになるが、それぞれ大騒動に発展して…



まず紹介するのは原作小説の「おれがあいつであいつがおれで」について。
「男は男らしく・女は女らしく」という大人のエゴに反発する形で、児童作家・山中恒が1980年に小学校高学年用の学習雑誌に連載したのが、「おれがあいつであいつがおれで」です。(以後原作と呼称。原作の主人公たちは小6という設定)
主要読者である子供たちから圧倒的な支持を得ていたのですが、「男は男らしく・女は女らしく」がモットーの大人たちに破廉恥小説だとして禁書並みに非難し追放運動のやり玉に挙げられたそうです。


それを一挙に黙らせたのが後に尾道三部作と呼ばれるようになるの大林宣彦監督による「転校生」(82年)です。(以後「尾道転校生」と呼称。)
現在古典的・優れた性教育の側面を持つ名著として持て囃されていますが、追放運動に近い非難から一変する大人たちにバカバカしさを感じます。
「尾道転校生」もこの非難の嵐の影響で資金調達が頓挫したりとさまざまな妨害を受けたそうです。ふたを開けてみれば「地味だが良質の映画」としてスタッフ・キャストの代表作となります。

この
「尾道転校生」(主演・尾美としのり・小林聡美  原作の内容をおおむね踏襲しながらも、年齢設定が中学生に設定されているために各所に原作そのままの台詞に違和感が生じています。)は当時の倫理観が緩かったため、ヒロイン一美役の小林聡美が胸丸出しのパンツ一丁状態になることが多いのですが、自分がビックリするのは、
その小林聡美のまるで女を感じさせないどうみても男の子にしか見えない完璧な演技‼
あまりの見事さに映画が終わるまであいた口がふさがりませんでした。着替えシーンだけでなく、入れ替わったあとの仕草一つ一つが全て男の子の仕草を完璧に再現しており、小林聡美はこの作品で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞します。
子供のころに観た92年の怪獣映画「ゴジラvsモスラ」に小林聡美はヒロインとして登場していますが、その演技もまるで伊丹十三映画さながらの演技であり、出世作の本作を観て改めて凄い女優であることを思い知らされました。

そして
「尾道転校生」をはじめとする大林宣彦の尾道作品群は、尾道をさびれた田舎町から一躍観光都市として世に知らしめることになると同時に、更に地元との協力関係の中で映画を作るという手法のさきがけとして注目を集め、これが後に全国各地のフィルムコミッションの誕生につながっていきます。
自分自身、大河ドラマなどの時代劇のエキストラとしてロケ参加の情報を得るためにフィルムコミッションの関係が欠かせなかったため、「尾道転校生」の恩恵を少なからず受けている一人だったりします。



この
「尾道転校生」から25年後、大林監督は舞台を尾道から長野に変更して「転校生」をリメイクすることになります。それが07年「転校生~さよならあなた~」(連仏美紗子・森田直幸  以後「長野転校生」と呼称)です。
夏の海の街が舞台の
「尾道転校生」とは反対の秋の山の長野が舞台で映画全体の画面が傾いているのが特徴的でした。主人公たちの心と体が入れ替わったことによるドタバタ劇は相変わらずですが中盤からオリジナルと大きく変わり
生とは何か?死とは何か?絶望とは…ということを問う大変哲学的な内容になっています
主役たちの演技に関しては「尾道転校生」の小林聡美たちの演技があまりに衝撃的だったために、それを越えたという印象はなかったのですが、「尾道転校生」のやや蛇足気味に思えたオリジナル要素に更なる生と死のスパイスが加わったことにより、尾道転校生で見せたオリジナル要素がかえって生き生きした輝きを放ったような印象を両者を観比べて感じました。
この後半の内容の為オリジナルを超えたと評する人もいるそうです。
「長野転校生」「尾道転校生」のどちらが上かということについては答えようがありませんが、後半の展開はまるでジャンルが変わり「長野転校生」は本当に涙腺崩壊ものです。

「長野転校生」はその年観た映画の中では最も好きな映画であり、その年に行った自転車旅行で長野の善光寺を訪れたとき、その寺内町周辺に散らばる映画のロケ地(足で蕎麦を打ったヒロインの実家の蕎麦屋・学校・痴漢を退治した神社・商店街…)の見学に走り回りました。
ちなみに物語に登場する痴漢役として当時テレビから消えていた
芸人ヒロシが出てきたのがとても意外でした。(ヒロシは今何しているのだろう?)
あとこの映画もメインテーマ「さよならの歌」にハマりこれをきっかけにこの歌を歌う歌手寺尾紗穂にハマりました。

「長野転校生」は「50年後の子供達に見せたい映画」となるべく本作は作られ、映画のラストに大林宣彦監督直筆のサインとともに添えられた
「人の命は限りがあるが 物語のいのちは永遠だろう。
未来の子供たちよ、―  今も元気で暮らしていますか?……」

はこの映画の象徴として大変印象に残っています。




以上三作の
「転校生」を紹介しましたが、あえてネタバレしないように書いたのでややわかりづらいかもしれませんが、三作それぞれ大変魅力のある作品に仕上がっています。正直、多くのことに影響を残してここまで長いこと支持されている作品ってなかなか存在しないと思います。
絶対に見て損しない作品だと思いますよ。



「君の名は。」なんかを実写化したらこんな映画になるのでしょうか?









…しかし大林監督作品ってどの作品を見ても思うのですがセリフ回しが大変独特ですよね。それだけで惹き込まれてしまう魅力があるように感じます。


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2016/09/10 19:05
度々コメントありがとうございます。
この度の「君の名は。」は劇映画としてのフィクション性が高い方なのですが新海アニメの多くは自分たちが思春期に感じた「あるある」をみずみずしく描いてるような作品ばかりですので、自分自身のそういう部分を大切にしている方はみんな新海アニメにハマるような気がします。

「秒速」で描いてることって本当に誰もが体験した「あるある」な初恋の喪失を描いたアニメなんですが、新海監督の切ない演出が余りにも見事なため本当に強烈でしたね。
複雑な心境はあるのですがよっぽどのことがない限り「秒速」が自分にとって一番の新海アニメであり続けると思います。
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2016/09/10 14:35
ブログ、読ませていただきました!
あらすじのところを読んでますます興味が出ました。

2週間寝込んでしまった話には驚きました笑
そうとう物語がみかささんにとって大きく響くものだったんだろうな
みかささん自身もきっと物語に強く引き込まれる力を持っているのだなと思いました。
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2016/09/09 23:47
コメントありがとうございます(^_^)そのとおり、私ミカサが「秒速」と呼んでいる作品は「秒速5センチメートル」です。
「君の名は。」とはエピローグの展開が「秒速」と似通っていながら全く対極ならストに至るかんじになっており、まさに「君の名は。」と「秒速」はある意味表裏一体のような感じ見えます。

「秒速」について私ミカサにトラウマを与えた作品でもあるのですが、一方で私ミカサの初恋や少年時代の原風景をまるで写し取ったような作品であるため自分が最も大切にしている新海アニメでもあるんです。
「秒速」については自分のブログの映画ジャンルにいくつも書いているのでもしよろしかったお読みください(^_^)
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2016/09/09 22:18
お返事ありがとうございます。
アニメのそういう些細なところは、ドラマにはなくてまた好きです!
調べたんですけど、「秒速」とは秒速5センチメートルのことですか?
その映画は観たことがなくてどんなお話か興味があります、DVDを借りてみようかな…笑
みかささんのどんな体験が被ったのかも気になります。笑
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2016/09/08 20:48
スイーツマン様へ…名前だけは聞いたことがあります。先駆的な作品だそうですが打ち切り番組だとも聞いております。「おれがあいつであいつがおれで」は80年代初頭の作品なので多少の影響はあるのかもしれませんが、特につながりはないかと思われます。
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2016/09/08 20:35
yumi様へ…「君の名は。」のことですね(^_^)
新海アニメで描かれる世界って日常の情景や恋愛に対する些細な仕草や心の揺れ動きなどをリアルに細かくとらえたところが特徴的でもあるため、新海アニメを見て既視感を感じた人って結構多いのではないかと思います。
私ミカサも「秒速」の主人公貴樹が体験したこと感じたことが余りにも自分と被っていたため結構トラウマになったくらいですしwww
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2016/09/08 20:31
なち様へ…なちさんが小学生の頃には推薦図書になっていたのですか。
連載時や刊行された際に追放運動していた大人たちのやることは本当にバカバカしく感じます。
毎年夏には新潮文庫の中高生の推薦図書の上位に必ず大林監督作品「ふたり」(新尾道三部作 赤川次郎原作)の原作が上がっているのはよく見ます。
「尾道転校生」の着替えなどのシーンは今やろうと思っても児童ポルノとかだってできないのでしょうね。
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2016/09/08 20:23
有効様へ…「長野転校生」公開の際に原作を読みました。もともと小学生が主人公なんですよね。
なんと、挿絵付きの物もあるのですか。それは気になりますね(^_^)

しかし「尾道転校生」が大学で借りられるなんてうらやましいなあ…
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2016/09/08 17:45
『へんしん!ポンポコ玉』
高校生男女が入れ替わる話。「『へんしん!ポンポコ玉』(へんしんぽんぽこだま)は、1973年4月15日から1973年7月29日まで、TBS系で放映された国際放映製作のテレビドラマ。」(wiki) 大林作品はそのあと。原作があるとすれば、もしかすると同じかな。
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2016/09/08 14:58
こんにちは、コメントありがとうございます。
学校生活とか、バイトとか、同じ高校生として共感した場面、ありました。
自分に近い話って興味わいて面白いですよね(^^)
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2016/09/07 20:14
こんばんは!
懐かしいです(^^
リアル小学生の夏休み推薦図書で、
「おれがあいつであいつがあれで」を読みました♪
小学生には相当刺激的な内容でしたがw
映画の「転校生」も結構ドキドキして見た記憶があります(^^;
アバター
2016/09/07 19:53
原作は児童文学だったんですね。
今ではかわいい挿絵がついたバージョンもあるようで。読んでみたいですね。
尾道転校生はもしかしたら大学にあるかもしれないので、あったら借りたいです。




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