アニメ「氷菓」関連の記事を書いている際にいつも「氷菓」の古典部シリーズよりも好きなのが米澤穂信のもう一つの看板シリーズである小市民シリーズ。
その第一弾が「春季限定いちごタルト事件」です。


中学時代に並はずれた推理力で数々の事件を解決してきたものの周りからひんしゅくを買っていた小鳩君は、同様の理由で浮いた存在になっていた少女・小山内さんと平穏な日常生活を送る「小市民」を目指して恋人関係でも依存関係でもない互恵関係で行動をともにしている。しかし事件に遭遇する度に誘惑に負けて事件を解決してしまう、悪戦苦闘の日々（?）。
そんなある日、小山内さんの自転車がかごに入ったままの大好物の春季限定のいちごタルトごと目の前で盗まれてしまう事件が起こる。自転車がボロボロになって帰ってきたとき、小山内さんが小市民を目指して隠してきた恐るべき本性が牙を向く!!


この「春季限定いちごタルト事件」は物語の構造からして古典部シリーズ「氷菓」と同じ典型的な日常ミステリーなのですが、この小市民シリーズの最大の魅力は上記のあらすじにあるヒロイン・小山内ゆきの恐るべき本性にあります。
小市民シリーズも「氷菓」の古典部シリーズと同じく日常事件を追って真相を暴く推理小説のセオリーを踏んでいるものの、それと同時進行でこの小山内さんが本性によって何をしでかしたのかが毎度大変気になるのがこのシリーズの特徴です。
特に二作目「夏季限定トロピカルパフェ事件」ではしでかしたことの重大さに（しかも誰も築いていない完全犯罪!!）背筋が凍ったことがあります。
この小山内さんの所業については賛否両論があるものの、その手口の鮮やかさに後味の悪さを通り越してアッパレとつぶやいてしまいます。（笑）
ハッキリ言って彼女の本質は動物に例えるならば明らかに羊の皮をかぶった狼です!!（推理好きの主人公・小鳩君は狼に比べたら狐同然!!）

小山内さんは古典部シリーズのメインヒロイン・千反田えるに比べて短身のおかっぱ少女の小動物系なのですが、その本性による存在感は小市民シリーズ一であり、千反田えるのとは対極にあるヒロインです。彼女の活躍なしではこの小市民シリーズは普通に推理してるだけでも肉抜きのハンバーガー同然の存在であり成り立ちません!!

そんな小市民シリーズ第一弾である「春季限定いちごタルト事件」はアニメ化した「氷菓」以前にコミカライズのメディアミックスがなされており、現在「春季限定～」の他に「夏季限定～」が共に前後篇で出ています。
そのため米澤穂信作品の映像化の一番乗りはこの小市民シリーズであると信じて疑いませんでした。（実際は最初の映像作品は映画になった「インシテミル」・古典部シリーズの「氷菓」であり、角川系列であるものの一度は闇に埋もれていた古典部シリーズに先を越されたことはいまだに信じられないでいます。

小市民シリーズは次の四作目「冬季限定～」で完結します。
最終巻で小山内さんが何をしでかすのか、
私すごく気になります!!