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つくしのつれづれノート


ストーカー映画「地獄門」

「地獄門」は今から60年前の古い時代劇ですが、
当時カンヌ映画祭のグランプリ(現パルムドール)を受賞した日本映画史上最大の代表作のひとつです。
ちなみに日本映画最初期のカラー映画です。



とりあえず映画の概要
平安末期が舞台の平家物語ものサイドストーリーといえる物語であり、
良くも悪くも近年話題のいわゆるストーカーを主人公にした映画ですwww

…で以下はあらすじ
平治の乱(源義朝が都で起こしたクーデター。平清盛に鎮圧される。)で手柄を挙げた侍・遠藤盛遠(長谷川一夫)は論功行賞の場で平清盛に戦のさなか一目惚れした美女・袈裟御前(京マチコ)との結婚を願い出る。ところが袈裟御前は同僚の侍の人妻だったのだ…
袈裟御前を諦めきれない盛遠は次第に凶悪なストーカーへと変貌し、
ついに盛遠は旦那を殺して袈裟を奪おうと凶行に走り、とうとう誤って袈裟を斬り殺してしまう…
後悔した盛遠は出家し、後に西行法師と並び称される名僧・文覚となる…


とにかく観てみるとわかると思うんですが
とにかく善良な普通の人間が凶悪なストーカーへ変貌して凶行に及ぶ様が大変リアルです。
最近頻発しているストーカー殺人事件の各事件のあらましを新聞やニュースで見ていると、この「地獄門」の内容と構造が同じなんですよね。
ちなみに作中の遠藤盛遠こと文覚は、平安末期~鎌倉初期に政治的に活躍した武家出身の大僧侶であり、「地獄門」作中の盛遠による袈裟斬りのエピソードが自体「源平盛衰記」(「平家物語」の異本であり、鎌倉前期成立の「平家物語」より成立時期が早いとする学説もある。)に描かれているものなので、案外事実だったりするのかもしれませんね。
そう考えるとストーカー事件っていうのは、いつの世どこでも常ってな感じなのでしょうね…
その生臭い人間模様のリアルさこそカンヌ映画祭の頂点に君臨した所以なのでしょう。



その凶悪ストーカーの盛遠wwwを演じたのが戦前のサイレント映画以来の時代劇のイケメンスタア・長谷川一夫
多くの女性ファンを虜にした美系スターの熱演による目のイったストーカー演技が凄まじく、
標的になった被害女性の側が感じるストーカーの恐怖がこの「地獄門」を通じて体感できます。
いや~、長谷川一夫って大河ドラマ「赤穂浪士」(64年)の主役や宝塚の名物演目「ベルサイユのばら」の生みの親って感覚しかなかったのだけど、
こんなにすごい人だったのですねぇ…
(全盛期だった戦前のサイレント時代はもっとすごかったに違いない。)

なお、ヒロイン・袈裟御前を演じた京マチコも50年の黒澤明監督作品「羅生門」(ベネチア映画祭グランプリ)をはじめとしてヒロインを務めた数々の出演作が国際映画祭の賞をとっているため「グランプリ女優」の異名を持つ世界的に有名な女優です。




名キャストの熱演もさることながら、
時代考証を元にした舞台の平安時代を再現した衣裳・小道具・セットなどの美術がすごいんです。
冒頭の平治の乱で登場する鎧武者の甲冑こそ戦国甲冑とごっちゃになっているのですが、それ以外の美術は大変リアルであり、
特に宮中行事の競馬の再現は大変見事で恐らく二度と再現すことはできないかもしれません。
この「地獄門」のスタッフ一同は二年後の1955年「新・平家物語」でさらに精密な時代考証による平安絵巻を再現しております。(煌びやかな「地獄門」とは対照的に泥臭い武家や庶民の描写がリアル。昨年の大河「平清盛」の美術センスの泥臭さも「地獄門」「新・平家」ほどではなくともいいセンスをしていた。内容・画質はともかく…)

こういう戦国以前の中古・中世を描いた時代劇を新たに観たいものです。

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2013/12/02 01:22
奈柚様へ…わたしミカサは鎌倉の住人ということもあって、鎌倉の全盛期だった戦国以前の中世武士が大変大好きで、そのての映像作品や資料関連を集めているんですよね。
その手のもので私ミカサの一押しは
大河ドラマ「草燃える」(79年)「太平記」(91年)とNHK人形劇「平家物語」の三作品です。
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2013/11/30 22:01
みかささんて ホント良く知ってるよねぇ
「地獄門」って見ようとは思わなかったけど
なんか 見たくなってきましたw




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