Nicotto Town


つくしのつれづれノート


ツーショット その2(終)

結局サエに諭されていきなり告白するという勇気までには至っていない。

思いが通じればその後はバラ色の様な日々が待っているのだろうけど、断られてタダシ君に寄せる恋が終わってしまうのがとても怖く、ならばもう少しだけ今のぬるま湯のような状態に使っていたいというのが私の本音だった。けれどそのまま卒業までぬるま湯に漬かり続けていたらタイムリミットがすぎてわたしの恋が確実に終わる。

考えないようにはしてるけど毎日がそのジレンマでせめぎ合っているのだ。

 

だから…

 

だからわたしはタダシ君と一緒にいた証しとして、タダシ君のとなりに自分が写ってる写真を欲したのだった。それがいま私にできる精一杯の勇気だった。

そのチャンスが到来した。

初夏に行われる二泊三日の修学旅行だ。

修学旅行の写真であればクラスメートに見透かされることなく堂々とタダシ君のとなりに写ることがことができるかもしれない…そう思ってのことだった。

 

修学旅行は京都だった。

残念ながら自由時間の班分けではタダシ君と一緒の班になることは叶わなかったため、二日目の二条城で撮影する集合写真がわたしに与えられた唯一のチャンスだった。

このチャンスをただの偶然だけでタダシ君のとなりに写ることができるとは思えない。そして私自身も偶然の産物に頼るつもりは毛頭なかった。

集合写真というものは全員がバランスよく写るようにする為か男女それぞれの背の順で交互に配置してから写すことがどうも多いらしい。幸いタダシ君と私とでは背の高さが似通ってたため、タダシ君のとなりに配置される可能性がとても高かったのだ。

それでも多少のずれは生じる。

わたしはそのズレをものともせずなんとしても自分の力でタダシ君のとなりのポジションを勝ち取るつもりでいた。それもさりげなく…

 

 

「はい、次のクラスどうぞ!」

いよいよ私のクラスの番が回ってきた。

担任の先生が背の順に並ぶようクラスメートに指示する。

背の順に並んだ際にタダシ君のとなりになる為にはあと一人分ずれていることが分かった。

そこでわたしはタダシ君のポジションにつくであろうとなりの子に対して

「あなたの方が私より背が低いんじゃない?」

と順番を好感してくれないかと持ちかけた。

その子は背が低いのをコンプレックスにしていたこともあって喜んで好感してくれた。

こうしてわたしはタダシ君のとなりのポジションを手に入れた。

 

「はい、みなさんいいですかぁ?はい笑って!」

パシャっというシャッター音と共にわたしが欲しがった光景はカメラによって切り取られた。

 

 

 

 

集合写真は修学旅行が終わってから数日後にできあがりみんなに配られた。

そこにはしっかりと大好きなタダシ君のとなりにわたしの姿が写っていた。

 

やった。

タダシ君のとなりになれた。タダシ君との思い出が一つ増えたんだ。

教室で集合写真をもらった時顔には出さなかった内心はすごく舞い上がっていた。

その高揚は家に帰ってからも続く。

自分の部屋のベッドにごろんと横になりながら集合写真を改めて見る。やっぱりタダシ君の横にわたしが写っている。私の思いに気付かなければ誰にも知られることのない秘密のツーショット写真。そう思うだけで感極まって足をパタつかさせた。

だけど…

 

だけど結局はそれだけなのだ。

別にタダシ君が私の思いを受け入れてくれたわけでもなく、ただのわたしの独りよがりに過ぎない。私がしたことはたったそれだけ。

そう思うと突然虚しくなり、涙がこぼれ出した。

「見ているだけでは欲しいものはいつまでたっても手に入らないものなんだよ。」

サエが諭した言葉がわたしの中をこだまする。

 

前は見ているだけでよかったと思っていた。だけどそれは卒業と共に終わりを迎え、いつまでも長続きしない。もうそれだけでは満足できない自分がそこにいるのだった。

欲しくなってしまったのだ。

 

 

だからわたしは決めたんだ。

卒業までにわたしの思いをタダシ君に告白するんだって。

どう転ぶかは分からないけど悔いが残らないようにこの恋に決着をつけるんだ。

明日から少しずつ前に進んで変わっていこうとわたしは心に堅く誓った。

アバター
2015/06/04 19:20
大潮様へ・・・多分この手の話はみんな普通に体験してるものなんだと思います。
だって今回は話半分は自分の実体験を元ネタにしているわけなのでwww
これ読んであるあると感じていただけたら、自分の恋愛感覚も常人並みということで安心できますwww
アバター
2015/06/04 19:17
奈柚様へ・・・欲張りだからこそ恋は前進させるべきものなでしょうね(^-^)
アバター
2015/06/04 17:43
恋心って大人への道のりなんだね・・・
並んでいたいって感情が
何でもさせる
覚えあるなああ
ドキッ
アバター
2015/06/03 22:54
恋心は欲張りだよね( ´艸`)




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.