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つくしのつれづれノート


ほしのこえ ノベライズ版(星にまつわる本)

「君の名は。」で話題になってる新海誠の初期アニメのノベライズ版です。
星にまつわる本ということで「星の王子様」や「銀河鉄道の夜」ばかりが挙がっているのであえて邪道に走りますwww
(当初は星ゆえに「巨人の星」を題材にして父・一徹が夜空に向かって指さした巨人の星は現実に何星を指してるかをレポートするつもりでしたが、あれは小説ではなくマンガなので泣く泣く断念www)


この「ほしのこえ」、2002年に発表され、
監督・脚本・演出・作画・美術・編集を、新海がほぼ一人で行なったことが話題となった文字通りの自主製作アニメ。
縦横無尽に活躍するロボット兵器や宇宙艦隊の艦隊決戦などの派手なSF要素が盛りだくさんなのですが、
それらはこの作品の本題を成立させるための所詮舞台セットに過ぎず、
絶望的なまでに引き裂かれたミカコとノボルの葛藤が最大の見どころです。
全24分の短編アニメとして非常にシンプルであるがゆえにその切なさがダイレクトに心えぐられ
間違いなく「秒速5センチメートル」と並び最も泣ける新海アニメだと思います。
特にラストの畳みかけはヤバいです。

「君の名は。」でイメージは変わりつつありますが、何かと鬱アニメな感じで喧伝される新海アニメの原点といえるでしょう。



とりあえず「ほしのこえ」のあらすじ
舞台は謎の宇宙生命体タルシアンによって人類が脅威にさらされているとされる、近未来。
人類はタルシアンを追うため宇宙艦隊を外宇宙まで派遣するが、そのメンバーに一介の女子中学生だったミカコが選ばれしまい、両想いの相手ノボルを地球に残し宇宙へ旅立つ。
旅立った後もミカコとノボルは携帯のメールで連絡を取り合うのだが、宇宙艦隊が地球を離れるたびに二人の距離も光年単位で離れ、2人の携帯電話メールのやりとりにかかる時間も半年・1年と次第に長くなっていく…
そして二人の距離はとうとうメールが8年以上かかるところまで引き裂かれ…







…でここからが本題の「ほしのこえの」ノベライズについて
このアニメ発表当時から大変話題になった作品だけあってコミカライズ・CDドラマ・ノベライズと多岐にわたりどれも展開結末が異なっているのが特徴。
今回紹介する「ほしのこえ」のノベライズについては2種類存在するんですよね。



まず最初に紹介するが大場惑執筆による「ほしのこえ」
…最初メディアファクトリーのライトノベルレーベルであるMF文庫で刊行されたもので
その後MF文庫ダ・ヴィンチ版・角川文庫・角川つばさ文庫とレーベルを変えて刊行され続けているいわゆる「ほしのこえ」ノベライズの実質底本となっているものです。
(後者角川系列は昨年の「君の名は。」のヒットの影響で再刊行されたヤツみたいですね)
このノベライズはアニメの作中ミカコとノボル二人しか登場人物がいない内容をベースにしつつ、短編のアニメでは語りつくせなかったサイドストーリーをふんだんに付け加えたものであり、
なぜタルシアンが人類に戦いを挑んでくるのかなどアニメで明らかにされていない核心部分が描かれており、「ほしのこえ」の世界観にさらなる奥行きを出しています。
特に注目すべきはアニメの結末以降のミカコとノボルのその後が明確に描かれていること。
その後の展開は「ほしのこえ」の制作資料から鑑みるにノベライズはアニメの完成度の問題から削除された初期設定をベースにしてるものと思われ、
アニメを見て打ちひしがれた方々にとってはまさに救いとなる一冊だと思います。

ちなみにこれまで4バージョンレーベルを変えて刊行されているためそれぞれ表紙や挿絵のイラストレーターがそれぞれ違います。4バージョン中3つはラノベです。(もともとラノベとして刊行されたものですから…)
・MF文庫版…柳沼行(漫画家 代表作「ふたつのスピカ」「群緑の時雨」)
・MF文庫ダ・ヴィンチ版…竹岡美穂(代表作「文学少女」シリーズ)
・角川文庫…アニメから切り取った場面を表紙にしたのみ。挿絵なし
・角川つばさ文庫…ちーこ(角川つばさ文庫を中心に活動するイラストレーターらしい。角川文庫「君の名は。」ノベライズの角川つばさ文庫版の挿絵も担当してるようだ。)






そしてもう一つのノベライズがエンターブレインで刊行された
加納新太執筆による「ほしのこえ あいのことば/ほしをこえる」です。
刊行時期が「秒速5センチメートル」公開直前の2006年と、2002年のアニメ発表から大分後だったりします。
このノベライズはアニメの内容をミカコ視点の「あいのことば」とノボル視点の「ほしをこえる」の二部構成に分けて綴られたもの。
こちらもアニメをベースにサイドストーリーなどを付け足したものなんですが上記の大場惑のノベライズと大きく異なる点が、
世界観の詳細描写よりもミカコとノボルの引き裂かれる葛藤をさらに追及したものになっており
ある意味アニメ以上にせつないと思います。
特にそれぞれのラストの二人の互いに想いあう絆はもはや恋や愛とかいうものを超越した達観・諦観の境地に達している感じであり、
私ミカサはアニメで流した涙がこれで枯れました…
なんかこの解釈がそのままアニメ化されたらそれだけで死んでしまいそう…www

執筆した加納新太という作家さんは他に
「雲のむこう、約束の場所」(エンターブレイン刊行。後に角川文庫で再版)
「秒速5センチメートル one more side」(エンターブレイン刊行。 一般に出回ってる新海誠本人による執筆とは別)
「君の名は。Another Side:Earthbound」(角川スニーカーズ文庫刊行)
…と新海アニメのノベライズを最も担当している作家さんなんですが(「君の名は。」ではシナリオ協力として制作に参加している。)、
どの作品も切ない内容が特徴的に感じます。
「ほしのこえ あいのことば/ほしをこえる」はその切ない展開の極致だと思います。

このノベライズについては主流になっている大場惑のノベライズ版と違って絶版になっています。
ある意味「ほしのこえ」の裏バージョン的な存在なので仕方ないのですが、Amazonでまだ中古が容易に手に入るみたいなので気になる方は今のうちに手に入れた方がいいかもしれません。








まあノベライズというものは原作が映像作品などである以上本体の原作が尊重されてしかるべきなんですが、
新海アニメについてはどの作品についてもアニメでオミットされた情報があまりにも多いため単なるノベライズの域を超えた奥行きの深いものが非常に多いのが特徴です。
新海アニメのノベライズに触れてみてさらに世界観の奥行きを追及して見るのも楽しいと思いますよ(^_^)

アバター
2017/07/10 22:16
かなで様へ…竹岡美穂版の「ほしのこえ」が欲しくてたまらないんですよwww
もはやコレクターの域ですwww

新海監督は基本背景に特化しか背景屋なためキャラクターの絵はそんなにうまくないんですよね…
自主制作の「ほしのこえ」にはそれがよく表れています。

メディアミックスの絵の中で一番新海アニメの雰囲気に近いのは「ふたつのスピカ」の柳沼行の絵ですね。
特に「秒速5センチメートル」や「星を追う子ども」の絵とかなり雰囲気が似通っていると思います。
アバター
2017/07/10 20:31
その昔、竹岡先生の表紙絵に惹かれて小説衝動買いしました。
なので、ぶっちゃけアニメしっかり見てないんですよね(^^;)




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