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■近代文藝之研究|研究|近代批評の意義(2)

■近代文藝之研究|研究|近代批評の意義 (2)

從つて其の歴史的變遷といふが如き者にも、取り出して論ずべき意義は無いのであるが、西洋に在つては文藝の他の一方即ち創作の方面と相并んで、批評も盛んに行はれ、また批評そのものに關する議論なども屡々繰り返されてゐる。我が文壇でも近時批評無用有用の論などが盛んであつたやうに記憶する。支那では流石に文學の國であるだけに、古くから批評が可なり盛んであつた。夫の六朝あたりから起つて唐宋、就中宋以後に榮えた修辭、詩話、文話の類、其他畫話、金石談の如きから、金元以後には金聖嘆等が小説批評の如きすら出て來た。古人をして宋に詩なくして談詩ありといはしめたのを見ても、其の如何に批評の盛であつたかは推し測られる。唯此等斷片の批評を全體の上から見て、そこに一貫した意義乃至傾向といふやうなものを見出だす研究が缺けてゐたのである。



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*註1:從つて其の歴史的變遷
原本ではこの文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
「歴」の旧字体。「林」が「禾」+「禾」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/reki.jpg
「遷」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註2:如き者
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg

*註3:文藝・我が文壇・文學・文話
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg

*註4:相并んで
「并」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hei_narabini.jpg

*註5:批評
「評」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hyou.jpg

*註6:屡々
「屡」(=俗字)の旧字体。「尸」+「婁」。

*註7:近時
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註8:六朝あたり
「朝」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/chou_asa.jpg

*註9:起つて
「起」の正字体。旁の「己」が「巳」。

*註10:就中宋以後
「宋」は原本では「宗」になっていたが誤植と思われるので改めた。

*註11:金聖嘆
「聖」の旧字体。「王」が「壬」。
「嘆」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tan.jpg
金聖嘆(?年~1661年)は中国、明末〜清初の文芸評論家。

*註12:小説批評
「説」の旧字体。旁は「兌」。

*註13:全體の上から
「全」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen.jpg

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html




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