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盗月Blog——島村抱月TextData——


■近代文藝之研究|序に代へて人生觀上の…(13)

■近代文藝之研究|序に代へて人生觀上の自然主義を論ず 六(1)

      六

餘論として茲に一言を要するのは、史上にいはゆる人生觀上の自然主義である。過去に於いて明に斯やうな名辭を用ひたのは、私の知る限りでは、Professor W.H.Hudson のルーソー論に Naturalism in Life と言つてゐるのなどが其の最近の例である。是れは言ふまでもなくルーソーの「自然に還れ」「自然の人」「反文明」「反人巧」の人生觀に冠した名であるが、若し之れを定限とすれば、さやうな人生觀上の自然主義は、私に取つては疑惑内の一事實たるに止つて、解決の全部とはならない。
ニイチヱが人生觀の、本能論の半面に見はれた思想も、一種の自然主義と見る人がある。それなら是れもまたルーソーの場合と同しく、我が疑惑内の一事實を提示するに過ぎないのは言ふを待たぬ。



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*註1:茲に
「茲」の俗字体か(?)。Unicode にも文字種がないようなので作字してみた。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/koko.jpg

*註2:要する
「要」の俗字。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg

*註3:史上
「史」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/shi_humi.jpg

*註4:過去・過ぎない
「過」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註5:W.H.Hudson
ウイリアム・ヘンリー・ハドソン( William Henry Hudson/1841年〜1922年)のこと。アルゼンチンで生まれ、イギリスで活躍。作家、ナチュラリスト、鳥類学者。『ラ・プラタの博物学者』『はるかな国 とおい昔』『緑の館』等。

*註6:最近
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註7:還れ
「還」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註8:反文明
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg

*註9:疑惑内
「内」の旧字体。「冂(=エンガマエ)」+「入」。

*註10:全部
「全」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen.jpg



*註11:半面
「半」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/han.jpg

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

(2014/04/28/初校)




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