■近代文藝之研究｜研究｜美學と生の興味｜中　遊戯説｜一　（２）

美學史上に有名な見解の一つは、夫の遊戯説である。此の説の起原は從來ドイツのシラーにあるとせられてゐたが、近來は更に夫の『批評原理』の著者でロード、ケームズと呼ばれるホームに其の先聲を歸する。而して遊戯説の要は、人間に生活力の餘贅ある場合に、それがおのづから溢れて遊戯となるといふに歸する。又斯くの如き遊戯と所謂美とは根本に於いて相通ずるといふに歸する。美は生の餘贅である。今まづ此の種の學説の一二例を擧げると、前記シラーの言ふところは科學的でなくして寧ろ哲理的であるが、其の意、人間には肉的本能（Sinnliche Trieb）と形的本能（Formtrieb）とあつて、前者は人間の生理的存在若しくは肉性から生じ、後者は其の絶對的存在若しくは理性から生ずる。



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＊註１：美學史上
「史」の旧字体。
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＊註２：遊戯説・此の説・遊戯
「遊」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
「戯」の旧字体。
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「説」の旧字体。「言」＋「兌」。

＊註３：起原
「起」の正字体。「走」＋「巳」。

＊註４：近來
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

＊註５：更に
「更」の旧字体。
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＊註６：批評
「評」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hyou.jpg

＊註７：著者・後者
「著」の正字体。
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「者」の正字体。
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＊註８：ロード、ケームズと呼ばれるホーム
ヘンリー・ホーム・ケイムス卿（Henry Home, Lord Kames／1696年〜1782年)）のこと。18世紀後半、デビッド・ヒュームやアダム・スミスなどとともにスコットランド啓蒙思想を牽引した。

＊註９：要は
「要」の俗字。
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＊註10：溢れて
「溢」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ahureru.jpg

＊註11：又斯くの如き
「又」の旧字体。
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＊註12：所謂
「所」の旧字体。
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＊註13：通ずる
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

＊註14：學説
「説」の旧字体。「言」＋「兌」。

＊註15：前記・前者
「前」の旧字体。
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「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg

＊註16：絶對的
「絶」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zetsu.jpg

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■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月（滝太郎）著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

（2014/06/28/初校）