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■近代文藝之研究|研究|沙翁の墓に…(33)

■近代文藝之研究|研究|沙翁の墓に詣づるの記 十(2)

そしてスツラッフォート、オン、エヴンの一日の紀念《きねん》は永《なが》く消えざるべしと書いて、末に當日讀んだソンネッツの一節が抄してある。
[#ここから5字下げ]
When to the sessions of sweet silent thought
 I summon up remembrance of things past,
 I sigh the lack of many a thing I sought,
  And with old woes new wail my dear time's waste;
 ……………………………………………………………………
     ……………………………………………………………………
 But if the while I think on thee, dear friend,
 All losses are restored and sorrows end.
[#ここで字下げ終わり]
歌はおもしろいが、思ひ出《で》は淋しい。噫「我れは記憶か、藝術は悦びか。」
[#行末揃え](明治三十九年四月)



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*註1:そしてスツラッフォート
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。

*註2:紀念《きねん》
「紀」の俗字(か?)。「糸」+「已」。

*註3:消えざる
「消」の旧字体。旁の「ナオガシラ」は「小」。

*註4:When to the sessions
『ソネット集』の30番。
[参照HP]⇒http://en.wikipedia.org/wiki/Sonnet_30
[本文引用部訳]
静かな想いにさそわれて、私が心の奥深く
 過ぎ去ったことどもをあれこれと思い出していると、
 かつて求めたものが数多く見当たらないのに、溜息がでてくる、
 ……………………………………………………………………
     ……………………………………………………………………
 だが、それなのに、君の姿を思い浮かべるや否や、
 損失はすべて帳消しになり、悲嘆は忽ち消えてゆく。(訳:平井正穂)

*註5:噫
「噫」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ai_aa.jpg

*註6:悦び
「悦」の旧字体。「リッシンベン」+「兌」。

*註7:明治三十九年四月
西暦1906年。師の坪内逍遥と文芸協会を設立し、『早稲田文学』を再刊した年。抱月が実際にシェイクスピアの墓に詣でたのは1903年(明治36年)4月のことなので、ちょうど3年前の思い出ということになる。

*註(補足):
原本本稿のルビに誤植が目立つのは、原稿にはルビがないのを植字、もしくは校正時に誰かが急遽付けたものと思われ、抱月自身の校正もかかっていないように思われる。
なお、以上で『近代文藝之研究』の「研究」篇は完了。次回からは、「時評」篇に移る。

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

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2011/09/28 00:28
ローマ字しらん^^つい最近ですね明治



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