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■近代文藝之研究|時評|動的美學(2)

■近代文藝之研究|時評|動的美學 (2)

申すまでも無く、動といふことを美の説明原理としたのは、強ち此の著者が始めとはいはれませぬ。近くはリップス氏なども一部の説明としては、既に此の意を用ひてゐます。たゞ之れを美の全體に渉るべき原理、美學の唯一根據と見て、爲めに一書を成したのはダーメン氏が始めでありませう。此の説が果してよう凡ての人を首肯せしめ得やうか否か、それはおのづから別問題です。
さて動的美學の概要は斯うであります。
古來美學上の經驗的原理は隨分と數へ擧げられてゐるが、フェヒナーも既に言へる如く、何れも甚だ不滿足である、尚ほ何故にと問ひ足らず、最後の説明に達して居らぬ。または何れも狭隘偏倚で、全局を蔽ふには足らぬ。調和といふことを原理とする説でも、變化の統一といふことを原理とする説でも、はた眞を描き實を寫すを以て原理とする説でも、凡て更に其の上に何故にと問ふの餘白を有してゐる。若しくは應用の出來ぬ場合が多い。而して是れに答へ是れを補うて美の全面の原理となり得るものは、動といふことである。動の原理に合するが故に調和も美となり、動の原理に歸趨するが故に變化の統一も美となる。



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*註1:説明・此の説・原理とする説
「説」の旧字体。旁は「兌」。

*註2:強ち
「強」の俗字。旁が「口」+「虫」。

*註3:著者
「著」の正字体。(↓見本文字のクサカンムリが「十」+「十」なのが正字)
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tyo_arawasu.jpg
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg

*註4:近く
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註5:既に
「既」の正字体。「白」+「ヒ」+「旡」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sudeni.jpg

*註6:全體・全局・全面
「全」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen.jpg

*註7:概要
「概」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/gai_oomune.jpg
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg

*註8:隨分
「分」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hun_wakeru.jpg

*註9:尚ほ
「尚」の旧字体。「ナオガシラ」は「小」。

*註10:達して
「達」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註11:狭隘
「狭」の旧字体。旁が「夾」。

*註12:調和
「調」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/cyou_shiraberu.jpg

*註13:更に
「更」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sara.jpg

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

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2011/11/23 09:12
統一の美今のコーデにも言える



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