Nicotto Town


盗月Blog——島村抱月TextData——


■近代文藝之研究|時評|東西新文藝の對比(1)

■近代文藝之研究|時評|東西新文藝の對比 (1)

     東西新文藝の對比

人間は大地にわいた蟲とは眞理ある言葉であらう。土に根を張つた樹木が大地の一連續に過ぎぬと等しく、人間も結局は大地の一連續である。肉體先づ土に連なつて、精神がさらに肉體に連なる土と肉と心と、三つはやがて一つ海水の浪となり泡となる姿とも見られる。
肉體が大地を離れて存じ得ざるの理は、何人といへども容易く認めるのであらうが、精神といふ不思議の一體が肉體と離れぬものであるとは、或は承知せぬ人があるかも知れぬ。學説の上に於いてすら、肉心兩體説が盛り返し盛り返して、今なほ學界の思想の一半を領して居る。併しながら吾人みづからは肉心一體の説を信じてゐる。肉體即精神、精神即肉體、兩者は一體兩面の發相に外ならねば、決して夫の貝殻の中に宿借蟹が棲んでゐるやうな關係ではないと考へる。



--------------------
*註1:文藝
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg

*註2:連續・連なつて・連なる
「連」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註3:過ぎぬ
「過」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註4:精神
「精」の正字体。旁の「青」の「月」は「円」。
「神」の旧字体。扁の「ネ」が「示」。

*註5:海水
「海」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kai_umi.jpg

*註6:何人といへども
原本には「何人といへとも」とあったが誤植と思われるので改めた。

*註7:認め
「認」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mitomeru.jpg

*註8:學説・肉心兩體説・肉心一體の説
「説」の旧字体。旁は「兌」。

*註9:盛り返し
「返」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註10:一半
「半」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/han.jpg

*註11:兩者
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg

--------------------
■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

アバター
2011/12/20 00:46
貝食べたら入るかも



Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.