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■近代文藝之研究|研究|美學と生の興味(32)

■近代文藝之研究|研究|美學と生の興味|中 遊戯説|二 (5)

美を功利實用から引き離すといふ思想は、無論今に始まつたことではない。カントが美感の特質を數へて其の一を無利害(Interesselosig)と斷じたのが、此の思想の近世に於ける明白な發聲である。美は道徳からも實用からも獨立する、之れを美の無利害性といふ。而して此の思想は一歩してまた唯美主義となり「藝術は藝術の爲なり」の説となつた。夫のイギリスのオスカー、ワイルド等の唱へたところが其の好例である。美は獨立して人生に其の力を布くを目的とす、他に何ものゝ力をも藉りて立つことなし。眞理の力に縁らんとするもの、現實の力に縁らんとするもの、皆惡藝術のみ、といふのが其の主張に外ならぬ。



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*註1:無利害
「害」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/gai_sokonau.jpg

*註2:近世
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註3:道徳
「道」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
「徳」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/toku.jpg

*註4:説
「説」の旧字体。「言」+「兌」。

*註5:縁らん
「縁」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/en.jpg

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

(2014/07/23/初校)




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