■近代文藝之研究|時評|文學入門者に(7)
- カテゴリ:その他
- 2012/04/25 05:51:00
■近代文藝之研究|時評|文學入門者に (二)(3)
昔は人の性質を心理學上から多血質とか、膽汁質とかいふ風に分けて、何の性質が何《ど》の方面に適すると云つたものであるけれど、然う鮮明《はつきり》と區別の付くものではない故、寧ろ事實的に漠然と言つて置く方が適切と思はれる。たとへば頭の工合の偏した傾のある、言ひ換ふれば性癖の特色の非常に鋭く出る人、從つて多くは肉體上の發達、顏の表情等にも自ら特色の表れ來る人、一言にして云へば、友人から那の男かと直ぐ顏かたちのあり[#「あり」に傍点]/\思ひ出される樣な強い特性を持つた傾向の人は作者になり得るやうな傾がある。近代の文學は一面に於て如何しても作者の個人性の發現であるから、同じ客觀の天地を見るにつけても如何《どう》してもその作者のにほひ[#「にほひ」に傍点]といふものが出て來る、隨分むき出しに赤裸のまゝで作者全體が出て來る。それが何も作者が作者として出て來るのではないが、作者の頭の中に成り立てる天地人生として出て來るのであるから、最後の優劣はその天地人生を映して居る主觀の鏡の比《くら》べくらといふことになつて了ふ傾がある。
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*註1:分けて・隨分
「分」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hun_wakeru.jpg
*註2:適する・適切
「適」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註3:鋭く
「鋭」の旧字体。旁は「兌」。
*註4:發達
「達」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註5:あり[#「あり」に傍点]/\思ひ出される
「/\」は踊り字・くの字点。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/odoriji.jpg
*註6:強い
「強」の俗字。旁が「口」+「虫」。
*註7:作者
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
*註8:近代
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註9:文學
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg
*註10:主觀の鏡
「鏡」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/kagami_kyou.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1
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