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■近代文藝之研究|時評|問題文藝と其材料(5)

■近代文藝之研究|時評|問題文藝と其材料 (5)

作の重力の中心少しく違つた方面にあつたので、そこが即ち近世の問題文藝と舊來の同じ材料を採つた作物との間にある相違であつて、而も此二方面の系統は今も存するので、英國に於いて、前に述べた問題劇の諸作と同時に出た同じく劇界の泰斗たる Arthur Jones の Mrs.Dane's Defence と云ふ如きも同じやうな問題を材料としながら、作の重力の中心が其問題の解決と云ふよりも他の方面、例へば戀愛と云ふやうな所にあつて、而も佳作の一となつて居ると云ふやうなわけである。我國にも同じ例はいくらもあらうと思ふ。(明治三十九年話談筆記)



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*註1:作の重力の
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。

*註2:違つた・相違
「違」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註3:近世
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註4:文藝
「文」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/bun_aya.jpg

*註5:前に
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg

*註6:述べた
「述」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註7:諸作
「諸」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syo_moro.jpg

*註8:Arthur Jones
ヘンリー・アーサー・ジョーンズ(ヘンリー・アーサー・ジョーンズ/1851年~1929年)のこと。イギリスの劇作家。

*註9:Mrs.Dane's Defence
日本では翻訳上演されていないようなので仮に『ミセス・デーンズ・デフェンス』としておく。いわゆる欧州ベル・エポック期(19世紀末~第1次世界大戦勃発=1914年)の「新しい女」を冷笑的に扱った演劇。

*註10:筆記
「記」の俗字(か?)。旁が「己」ではなく「巳」。

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

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2012/07/15 11:17
うむうむ 長く書いてる作家多いね海外は

日本だと長生き無理みたい作家



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