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■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義(7)

■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義|一 (7)

斯くの如くして藤村獨歩の諸氏はむしろ外間から其の傾向によつて自然主義と總稱せらるるに至つたが、作者みづからも目下の自家の作風態度が最も此の稱呼中の意味に近いものであることを承認してゐるであらうと信ずる。更に其後では、近時の諸短篇に見える小栗風葉氏、徳田秋聲氏、『蒲團』に見える田山花袋氏、『其面影』に見える長谷川二葉亭氏、『紅塵』に見える正宗白鳥氏、乃至其の他の新作家、すべて益々自己の傾向主義に對する自覺を明にして行くのでは無いかと察せられる。而して此等諸家の主義傾向を一括して、最も便宜な名を與へれば、自然主義であらう。勿論一旦名を與へれば、其名に役せられるといふ弊もある。けれどもそれは何の場合にも存する利害對立の一面に過ぎぬ。



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*註1:諸氏・諸短篇・諸家
「諸」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syo_moro.jpg
「篇」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hen_kyuuji.jpg

*註2:作者
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg

*註3:近い・近時
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註4:承認
「認」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mitomeru.jpg

*註5:更に其後では
「更」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sara.jpg

*註6:徳田
「徳」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/toku.jpg

*註7:『蒲團』
原本では『蒲圃』とあるが誤植と思われるので改めた。

*註8:益々
「益」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/eki_masu.jpg

*註9:察せられる。而して
原本には「察せられる」と「而して」の間に句点がないが改めた。

*註10:便宜
「便」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ben_tayori.jpg

*註11:弊もある
「弊」の旧字体。「敝」+「廾」。

*註12:利害
「害」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/gai_sokonau.jpg

*註13:過ぎぬ
「過」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

(2014/09/23/初校)

【註:■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義(7)について】
初校作業中、「■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義(7)」のページが消失してしまったため、上のコメント欄にて同稿を掲載します。

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2014/09/29 17:45
(下コメント欄のつづき)

*註8:經歴
「歴」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/reki.jpg

*註9:茲に
「茲」の俗字体か(?)。Unicode にも文字種がないようなので作字してみた。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/koko.jpg

*註10:重要
「要」の俗字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/you.jpg

*註11:通過
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
「過」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

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http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1

(2014/09/29/初校)
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2014/09/29 17:44
■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義|二 (1)
■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義(8)

        二

過去に於ける小杉天外氏の自然主義、乃至後藤宙外氏の心理的、硯友社風の寫實的等と、現在の所謂自然主義との間には、短少ながらも我國相應のスツールム、ウント、ドラング、若しくはロマンチシズムが介在して居る。明治三十四五年頃のいはゆるニイチェ熱、美的生活熱の勃興から、同じく三十七八年度までが即ちそれでは無いか。今の自然主義は實に此の小ロマンチシズムの後に起つた特殊の現象である。前期の自然主義寫實主義には此の經歴が具備して居なかつた。吾人は茲に重要の意味があると思ふ。切言すれば自然主義は必らずロマンチシズムを通過したものでなくてはならぬ。



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*註1:過去
「過」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註2:硯友社
「社」の旧字体。「示」+「土」。

*註3:所謂
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg

*註4:スツールム、ウント、ドラング
シュトゥルム・ウント・ドラング(Sturm und Drang/ドイツ語)のこと。18世紀後半のドイツで現れた文学運動。
・参照⇒http://go.ascii.jp/?wiki_stsu-rumu

*註5:ニイチェ熱・美的生活熱
「熱」の俗字体(か?)。「執」+「レンガ(レッカ)」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sakuji_netsu.jpg

*註6:起つた
「起」の正字体。「走」+「巳」。

*註7:前期
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg

(上コメント欄へつづく)



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