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■近代文藝之研究|講話|新裝飾美術(4)

■近代文藝之研究|講話|新裝飾美術 (4)

佛蘭西のラ・フヰガロー[#「ヰ」は小文字]の一記者は、曾てこれを呼んで、「ヌーイーエとムートンの骨との美術」即ちうどん菓子と羊肉の骨とを繼ぎ合わせたやうな美術といつたと言ふが、然し今日は日本でも既に廣く行はれてアール・ヌーヴォーといへばあれかと人もうなづくやうになつて居るから略しませう、唯此の一種の裝飾法が、歐羅巴の到る處に瀰滿して居つて、大陸諸國は勿論、英吉利などでも近年特に盛んに行はれて來て居る。或る英吉利人が數年前に言つた事に、大陸に旅行するとホテルの壁も天井も階段の欄干もテーブルの上も床の敷物も盡くクル/\と渦を卷いたやうなアールヌーヴォーであるから目が廻るやうだといつて居ましたが、全く事實其通りである。最近時大陸では既に稍此式が飽かれんとしつゝあるとの説もあるが、それは未だ然し事實の上には現はれてゐないといつてよい。目下に於る裝飾界の最も大なる勢力は矢張これである。それでワルドスタインの曰ふには、歐羅巴就中英吉利の室内裝飾の意匠界に革命を起した所のモーリスの勢力は、矢張それに次で同じやうな革命を起した所のアールヌーヴォーにも及んで居る、アールヌーヴォーはモーリスの裝飾美術と日本の裝飾美術との結合である。



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*註1:佛蘭西のラ・フヰガロー
原本では文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。

*註2:記者
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg

*註3:既に
「既」の正字体。「白」+「ヒ」+「旡」。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sudeni.jpg

*註4:裝飾
「飾」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syoku.jpg

*註5:諸國
「諸」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/syo_moro.jpg

*註6:近年・最近時
「近」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註7:數年前
「前」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen_mae.jpg

*註8:欄干
「欄」の旧字体。「木」+「門」+「柬」。

*註9:クル/\と
「/\」は踊り字・くの字点。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/odoriji.jpg

*註10:全く
「全」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/zen.jpg

*註11:其通り
「通」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。

*註12:飽かれん
「飽」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/aku_hou.jpg

*註13:説も
「説」の旧字体。旁は「兌」。

*註14:室内
「内」の旧字体。「冂(=エンガマエ)」+「入」。

*註15:起した
「起」の正字体。旁の「己」が「巳」。

*註16:所の
「所」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/tokoro.jpg

*註17:次で
「次」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/ji_tsugi.jpg

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http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
■このテキストの原本は国立国会図書館「近代デジタルライブラリー」収録の「近代文芸之研究 / 島村抱月(滝太郎)著 早稲田大学出版部, 明42.6」の画像データに依っています。
http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/871630/1




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