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ごま塩ニシン


新怪アウトプッター(7)

 電子部品S商事の小野寺は胆力のある男で、大胆な提案力と成果主義の制度の中で社長の座を射止めた実力者であった。平田総務部長の書類に一瞥すると秘書に大型封筒を持って来させ、問題の文書を封印すると木村専務と技術開発の吉岡室長を同席させた。というのはM社とは取引関係にあり、M社が製造する汎用AI部品をS商事は、将来の販売戦略の基軸にする計画をもっていたからだ。これからはAIの時代になっていく。AIの設計から製造までを手掛けるM社は重要な取引相手であった。この会社の取締役会の議事録が、自社のプリンターから出てきたことは青天の霹靂であった。
 大きな社長デスクを取り囲むように三人は立っていた。普段であれば、社長室に隣接する小会議室での打ち合わせになるが、対策が急がれる緊急事態であった。
「他社のデータが自社に流れてくるなんて、通常は考えられません。各社、セキュリチ―対策は厳格になっていますから。それに、今は取引先が相互にネットで繋がっていますので、それだけにネットでの出入りについては記録されています。もしもですが、ハッカーに狙われている場合は異常を直ぐに監視できる体制になっています。これは、ちょっと首を捻る出来事ですね。」
 吉岡技術開発室長は、専門家であるだけに信じ難いという意見であった。
「専務は、どう思う。」
 小野寺は椅子の背もたれに体をあずけて身を起こした。目の前にいる三人の首脳陣の対応を見定めようとしていた。
「セキュリチに関する技術的なことは万全だと聞いていましたから・・・。対策をするにしても、・・・なんですね。M社にどのように連絡するのかということですが、・・・放置はできないでしょう。」
 経済学部出身の木村専務には、困ったことになったとしか映っていなかった。
「僕の心配は、他社のデータがわが社に流れてきたというよりも、わが社のデータが他社に流れ出ていないか。こっちの方を心配しているのだよ。」
 こう言って、小野寺社長は首脳陣を叱責するようにデスクをバンと叩いた。
 

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2018/01/21 08:25
僕の心配は。の所から、キタワ。(笑い

やっぱエンジニアじゃぁね。(笑い

文書かっこいいわ。



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