Nicotto Town


ごま塩ニシン


おすがり地蔵尊秘話(23)

 店に客はいなかった。
「また、お早いおでましですな。今日の仕込みはこれからですから。」
 店主は、こう言って、おでんのガスを点火した。
「やっぱり、なんだね。一人生活というのは寂しいね。」
「なにを今さら、改まって言っているのですか。あなたは物書き屋さんでしょう。何ですね。寂しいなんて言っていたら、小説は書けませんでしょう。孤独を材料にして物語を作り上げていくのが、作家さんじゃないですか。」
 こう言いながら、店主は日本酒の徳利をテーブルに置いた。
「今日は、えらく手厳しいな。」
「うちはね。酒さえ飲んでもらえば、商売ができますから、お客さんが寂しかろうが、楽しかろうが正直言って、関係はないのです。」
「まあ。そうだろう。店主の言う通り。」
 私が呑み始めると、店主が鯛の刺身皿をテーブルに差し出した。
「これ。私からの気持ちです。うちの店のことも、小説の題材にしてくださいよ。テレビドラマにでもなったら、そりゃ、えらいことになりますで。」
 こう言って、店主は笑った。
 私は何も反論できなかったので、話題を変えるしかなかった。
「寒気が南下しているので、明け方に大雨になると予報があったね。」
「そうらしいです。だけど、今夜の営業には関係ないでしょう。明け方と言っていますから。天候は営業に響きますから、こまりまっせ。」
「だろうな。しばらく飲んでいる内にバスもなくなるから、今日はタクシーで帰ることにしたから、腰を据えて呑ましてもらうよ。」
「ゆっくりしていって、くださいよ。」
 この時、店主の嫁さんが荷物を提げて、店に入って来たから、会話は途切れた。
 この後、どれくらい飲んだだろうか。普段より酒量が増えて、駅のタクシー乗り場まで行くのに私の足取りはふらついていた。酔いながら、運転手に行き先の道順を説明していたが、埒が明かないので「玄峰寺を知らんのか。」と叫んだ記憶が残っている。相当に酩酊していたようであった。どうして家の中に入ったのか、後日、振り返って見ると、意識に何も残らない状態であった。

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2018/03/09 06:55
玄峰寺なんてよむ。
を知らんのか?

大人の隠れ家居酒屋的とか、タクシーで、近代の都内とか。
1度、目を通した、新聞みたいで、
ごまさんの小説は、大好きですよ。ファンですよ。

ほっと、すること、一服の楽しみ。全然OKです。

私も、ソリティアで、勝負くらいですから。(笑い




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