Nicotto Town


ごま塩ニシン


夜霧の巷(16)

 ルポライターを目指す菅原慎一郎はある意味で幸運であった。なぜなら、警察は溺死体の検分で事件を匂わせる外傷がなければ、一応、酔っぱらった信太がふらついて橋から転落したという事故説に傾いていた。対象車両の追跡もなされていたが、最寄りの警察署へ該当者の運転手が出頭してきたという連絡を受けて、さらに事故説へ大きく傾いていった。この一方でユーチューブの投稿者を確定するのに時間を取られた。それでも刑事はユーチューバーの古宮雄太を、菅原が会った翌日に訪問していた。大学生の古宮は、まさか刑事が訪ねて来るとは夢にも思っていなかったので、自分がもっていた映像記録を全て提供した。
 古宮は、警察に参考資料として橋の映像はすべてもっていかれましたと菅原にメールで連絡してきた。ややこしい関係から自身を守りたいという古宮の本能が働いたのかもしれない。古宮は映像を写し取るのが好きで非常な興味を持っていた。将来、ショートストーリーの映画、10分か15分で完結する映像作家を目指していた。通勤電車の中でスマホで見ることのできるショート映画の作家になるのが夢であった。ただ、どのようなテーマで物象をドラマ化すればいいのか、十分に把握できていなかった。それでも一応、マンションの自分の部屋から見下ろせる運河の橋に焦点を絞って、定点カメラを2台設置していた。今回のような出来事は思わぬ珍事であって、無垢な想像力に泥を吹っ掛けられたと勘違いしていたが、ルポライターという菅原の名刺の肩書に幻想を感じたのか、何か菅原と繋がりをもっておきたいと思たのかもしれない。この両者の結びつきは後日の因縁を想定するものであった。
 時間は静かに経過していった。菅原にしても、警察にしても事態を揺り動かす機会を模索していたが、これといった目ぼしい出来事は起こらなかった。信太盛太郎の遺体は遺族に引き取られ、家族葬が行われた。糸口と言えば、トラック運転手の上林良平が拾った手提げバッグが、その後、どのように処分されたのかということになるだろう。白い封筒に20万円という新札が入っていたが、上林は遺失物の届け出をせずにポケットに入れてしまった。これは窃盗である。この彼の意識と行動が灰と化してしまった信太盛太郎の魂を蘇らせていくことになるのだが、上林は何も気づいていなかった。不要となった手提げバッグを走行中の高速道路から投げ捨てようと思ったが、それも決断しかねた。休憩に入ったドライブインのゴミ箱に入れようかと考えた。しかし、自分に罪の意識があるからだろう。不用意な行動で証拠が第三者に握られるよりか、手提げバッグなら自宅に持ち帰り、暇な時にハサミで細かく切り裂き、生ごみとして出せばいいだろうという結論になった。

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2018/04/17 06:30
youtubeは観ている。
UMMMM(株)らしい。
でも、毎日5分から10分のUPする「ネタ」が何もない。
ましてや、顔出しなんぞ。無理。
まー編集ソフトや、コメントが、youtubeゆえの仲間が、出来るらしいし。
右!の盾は、欲しいが。。。



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