Nicotto Town


ごま塩ニシン


夜霧の巷(19)

 次の瞬間、木崎の表情が一変した。
「どうしても、解明したいというのであれば、漢籍に造詣の深い先生を知っているから、なんだったら、頼んでやってもいいよ。うちの親父がやっている開珍堂に出入りしている人だから、信頼のおける先生だ。ただね、ロハということにはいかないからな。君の方で予算があるかどうかだよ。」
 これは商売になると木崎は判断したのかもしれない。
「いくらですか。」
 こう質問しながら上林の言葉に力がなかった。まったく予期していなかった成り行きになってしまった。
「いやね。先生とは長い付き合いだから、謝礼と言っても、そうだな、居酒屋で飲む程度の金額でいいのだよ。どうかね。」
 こうなると形勢が逆転して、上林よりも木崎の方が熱心になってきた。
「おれも、余裕がないからな。相談料といわれてもな。」
「おい。2万円でどうや。俺とお前と先生と3人で居酒屋で落ち合って、このノートを見せて、解明してもらったらいいのじゃないか。」
 木崎は立ち上がって、上林の肩をポンと叩いた。いつもの上林であれば、こうした誘いに応じることはない。ただ、上林には20万という予期せぬ金が手許にあったことが事態を推進させたのかもしれない。どうせ、拾ったもので苦労して溜めた金ではないという気楽感があったのかもしれない。こうして事態は一歩踏み出された。
 その日の夕刻、三人は大漁旗という屋号の居酒屋で落ち合った。木崎が紹介したのは新垣内甚内という四十年配の男であった。一応、背広姿で現れたが、シミの付いたネクタイをした風采の上がらない風貌であった。しかし、話し方はどこかの大学で教鞭をとったことのあるような喋り方であった。
「どのような物なのでしょうか。」
 生ビールにも手を出さず、新垣内は姿勢を正して言った。そして、上林が差し出したノートを見て、即座に反応した。
「これは漢詩ではないですね。暗号じゃないですか。たぶん、書いた人が他人に見られることを嫌って、備忘的に漢字を並べて記録したものじゃないですか。」

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2018/04/26 09:20
なんか聞くよね。

消えモノ消費とか。(食べ物。


私も、派遣契約社員の仕事の時、あのクロムハーツを3万で、買って、

頑張りを、残したよ。


何処かの教鞭ですか。林先生。(笑い




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