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龍馬景気

1962(昭和37)年6月21日。
この日,産経新聞に連載が開始された小説はたちまちベストセラーとなり,66年5月19日にまる4年の連載を終了するに至った。
この作品を読んだ老若男女がどれ程の人数にのぼるか分からないが,相当数に上ることだけは間違いない。
単行本にして全5巻,文庫版は全8巻。
これは私が初めて読んだ高校時代まてでは,最長の小説であった・・・。
司馬遼太郎著「竜馬がゆく」。
司馬文学の代表作は?と聞かれたら,「坂の上の雲」とともにまずは指折られるべき傑作である・・・。


実は「龍馬」が流行ると景気が上がる,というジンクスがあるらしい。
「竜馬がゆく」連載中,そして単行本が上梓された62~66年の途中,64年には御存じ東京オリンピックがあり,世間は空前のオリンピック景気に湧いた。
その余韻がさめやらぬ68年,NHKの大河ドラマはこの「竜馬がゆく」であった(実はその3年前に,毎日放送で中野誠也主演で放送されていたことは意外に知られていない。勿論私は見る由もないが・・・)。
北大路欣也が骨太に竜馬を演じた(そして時代劇初出演という高橋英樹が,武市半平太を演じた)この大河は視聴率が14%と低迷し,幕末維新ものは当たらない,というジンクスを生むに至ったのだが(ついでに1994年の「花の乱」まで低視聴率1位の座を守った),その終了から1年と3ヶ月後,経済高度成長が最高潮に達したともいうべき象徴として日本万博が大阪で開かれた。
その後は,司馬作品に心酔した武田鉄矢コミックのが原作者を務めた「お~い竜馬」(作画小山ゆう)がNHKによってアニメ化された。
確か昭和末期から平成初頭にかけてのことと記憶している。
大型間接税の導入等,あまり芳しくない話題が多く,政権交代の周期が極めて短くなったのもこの頃からであるが,世は空前のバブル景気に踊らされていた・・・。


・・・といった具合に,「龍馬」が流行ると景気が上がるそうだが,果たして今回の「龍馬伝」は如何なることになるのだろう・・・。
だいたい68年の大河や,82年のテレビ東京版を知っている者にとっては,龍馬像(この場合は竜馬像か)が確立されているので,その固定観念を崩すのが大変だろう・・・。
また,「竜馬がゆく」を熟読した者にとっては,どうにも違和感があるに違いない(勿論,私もその1人だが)。
しかし,ここらで新しい平成の龍馬像が確立されるのも悪いことではないと思う。
明治初頭,龍馬を扱った最初の小説「汗血千里駒」(坂崎紫欄著)でその行状と功績が注目され,やがて昭和のベストセラーが生み出された後だから,そろそろ・・・という気もしないでもない・・・。
ただ,残念なことに司馬作品を越える小説も映像も,現時点で出てきていない(そして今後も出そうにない)のが残念なのだが・・・。
否,横顔が美しいという福山龍馬の人気は相当なものだという(確かに「篤姫」での玉木龍馬より良いか・・・)。
何でもNHKが数年の交渉の後に口説き落としたという噂も聞いた(真実の程は定かでないが・・・)。
空前の歴史ブームの到来と言われている昨今,元来歴史に興味のない人たちの関心を引く上でも手段としては間違ってはいないと思うのだが,ストーリーの展開が史実から乖離したものとなっているのがやはり問題と思う。
龍馬が規制路線である尊皇攘夷に便乗せずに,独自の思潮と手段で新しい時代を切り開いていく様子が果たしてあれで視聴者に伝わるのか・・・という疑念は消えない・・・。
もし龍馬という存在が,近年語られているフリーメーソンとの関連ではなく,司馬文学に描かれたような幕末維新を1人で導くという歴史上の奇跡を起こした英傑であるならば(根拠なしという歴史家も多いが),尚更正しく描いて欲しいものである・・・。
龍馬の成し得た薩長同盟とか大政奉還が如何に奇跡ともいうべきことだったかを知らしめるのに,TV程うってつけのメディアはないのだから・・・。
そして,低迷する景気もどかんと回復したら何も言うこと無い・・・。





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