Nicotto Town


koshiのお部屋分家


坂の上の雲-第6回「日英同盟」

待つこと1年,ようやく第2部が始まりました。
私が原作を読んだのは17年前のことであり,今は文庫版の第一巻が手元に有るのみなのて,記憶も定かではなく,原作に忠実とかフィクションとか語ることは不可能となります(司馬遼太郎自身,執筆に当たって極力フィクションを廃した,と何かで見た記憶がありますが,小説であるが故に多少の脚色は仕方のないことと思います)。
今回は全13話中6話ということで,この長い作品も中盤を迎えました。


前半は,英国留学中の真之の行状が親友広瀬武夫との再会等のエピソードで描かれます。
1900(明治33)年7月31日,戦艦「朝日」が英国にて竣工。
まだ我が国には戦艦を建造する力が無いという真之の言葉が,当時の国力と緊迫した国際情勢を容易に伝えてくれます。
確か八幡製鉄所の操業開始が同年であり,来るべき大艦巨砲時代の萌芽ともいうべき時代であったのかも知れません。
また,同年6月には清で義和団事件(北清事変)が発生。
中国を虎視眈々と狙い列強が,ここぞとばかり北京に出兵。
中でも,満州や遼東半島・朝鮮での利権を争う我が国とロシアが一番兵力が大きかったことが語られ,ロシア軍の軍規がとんでもなく劣悪だったことも,中国人の無差別殺戮と略奪行為からうかがい知ることができました。
好古が清に行ったのは翌年の5月30日に軍司令官山根武亮少将の清国駐屯軍参謀長に異動した際であり,7月4日には清国駐屯軍守備司令官になっています。
義和団事件の戦後処理の時期でもあるので,もしかするとあのような光景を目の当たりにしたやもしれません・・・。


中盤は,桂内閣下での元老伊藤が,日英同盟に反対して渡露して大蔵相のセルゲイ・ヴィッテと会見。
好感触を得て皇帝ニコライII世に謁見し満韓交換論を提唱するも(今回は具体的に言っていませんでしたが),結果的に朝鮮半島での利権は認められず,失意のうちに日英同盟が締結。
後に韓国統監府初代統監となって,北満で韓国青年安重根によって命を失う伊藤ですが,彼の考えの根底にあるのは常に韓国の独立であり,統監府自体を韓国が国力を付けるまであくまでも暫定のものとしていたことは間違いないと思います。
勿論韓国統監府初代統監として韓国人の恨みを買ったこと,そしてそれによって命を縮めたことは事実ですが,朝鮮皇帝の高宗が伊藤を賛美する言葉を残していることからも,朝鮮半島支配の帝国主義の権化と,短絡的に見るのは間違いでしょう・・・。


後半の主役は,ロシア駐在武官となった海軍少佐広瀬健夫です。
ペテルブルグでのアリアズナとの恋愛模様が結構濃厚に語られますが(原作はここまでてはなかったと記憶),某大河ドラマのように鼻につかないのは何故でしょう・・・。
ペテルブルグを訪れた伊藤に,ロシアが南下政策と恫喝外交を止めないことを進言したくだりは創作と思われますが,ロシアが日本を如何に嘗めきっていたかということが,如実に分かります・・・。
やがて広瀬に帰国命令が下り,アリアズナとの別れとなります。
その際,Aのイニシャル入りの銀の懐中時計を彼女に贈られたことや,シベリア鉄道巡視を兼ねて油田地帯であるバイカル湖畔のイルクーツクまで行き,そりでシベリアを縦断したことも史実でしょう・・・。


演じる俳優さん達は皆達者です。
根岸の家で病身ながら短歌に勤しむ子規を演じる香川さんは,弥太郎のようなぎらぎらした感じは無いものの鬼気迫る演技を見せますし,伊藤役の加藤さんも相変わらずの存在感を示してくれます。
もっくんも軍人姿がかっかり板に付いていますし,阿部さんの騎乗姿が恰好良いのは昨年の御館様以来です。
白眉はやはり広瀬少佐役の藤岡さんでしょうか・・・。
バルセロナ五輪の競泳選手(しかも8位入賞)という異例の経歴を持つミュージカル俳優ですが,武人としての風格と威厳,武士道の求道者としての生き方等,実に様になっておりました。


・・・ということで,あっという間の1時間半でした。
長い原作の映像化ということで,詰め込みすぎ・急ぎすぎの感はありますが,映っている絵の素晴らしさとキャストの充実によって,一瞬のダルな瞬間もありません。
やはり制作者の志の高さということでしょうか・・・。
今年・去年の大河が,この作品にエキスを吸い取られた結果,あのようなものになってしまったのだとしたら,罪作りな話ですが・・・。
いずれにしても,次回が楽しみです・・・って,先行放送を録画してあるんですけどね・・・。





Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.