モーツァルト忌
- カテゴリ:音楽
- 2011/12/05 20:14:01
今日は特別な日のようです。
昨日の「坂の上の雲」絡みだと,第3軍による旅順要塞および203高地陥落の日,そして何と220年目のモーツァルトの忌日に当たります。
旅順要塞に関しては,多分来週の「坂の上の雲」関連で語ると思いますので,今日は220年前に貧困と病のうちに亡くなり,死体すら分からなくなったというモーツァルトの楽曲について(恐れ多くも)述べたいと思います。
20年前,モーツァルトの没したウィーンでは,没後200年を記念したコンサートが,厳かに行われました。
当然,曲は晩年の未完の大作である鎮魂曲(レクイエム)。
管弦楽は世界に冠たるウィーンフィルハーモニー管弦楽団。
指揮は,ハンガリー出身で英国に帰化してナイトの称号を受けたゲオルグ・ショルティ。
この模様は,衛星回線を通じて全世界に放映され,私もリアルタイムでBS2から録画をしたEDβのテープが押し入れに眠っている筈です・・・。
ぶっちゃけて言ってしまえば,私はベートーヴェンを敢えて聴くことは無いものの,モーツァルトに関しては,積極的な聴き手である・・・ということが言えると思います。
この2人は,ウィーンでハイドンに習った言わば兄弟弟子関係でして(勿論モーツァルトが年長で夭折したのに対し,ベートーヴェンは,その後36年,57歳まで生きました),
お互いの作品に,かなりの共通項が散見されるのですが,作曲の動機や生活の背景はかなり異なります。
ベートーヴェンの壮年期である19世紀初頭は,欧州が共和制からナポレオンの親政へと大きく時代が動きました。
それによって,音楽はそれまでの宮廷や教会から離れたものとなり,自分のため・人々のために曲を書く・・・といった,所謂浪漫主義の時代へと移行していきます。
ベートーヴェン以降の作曲家は,多かれ少なかれこの浪漫主義の下に曲を書いたと断言しても良いかもしれません。
それに対して,モーツァルトの時代は,音楽家はあくまでも宮廷とか教会のお抱えであり,そうしたバックボーンの依嘱によっての作曲が為されたのであり,心情の吐露とか苦悩と韜晦といった生身の人間の感覚とは異なるところで,音楽が奏でられていたと言っても良いのかもしれません。
浪漫主義の音楽が,直接聴き手の心に突き刺さるように揺さぶるのに対して,モーツァルト以前の所謂古典主義の音楽からは,古典的な様式感とかバロックやロココと言った宮廷文化の香りが感じられるとも言えましょう・・・。
もっと端的に言えば,直裁に心情に訴えて共感を呼ぶのが,ベートーヴェン以降の浪漫主義の音楽であり,モーツァルト以前の音楽は基本的にそうしたものではないと言って良いかもしれません。
では,直裁に心情を刺激しない筈のモーツァルトの音楽は魅力がないのか・・・ということになりますが,答えは断じて否です。
爛熟を極めた18世紀末の典雅な宮廷の文化が,完成された古典的な様式感に載って示される楽曲が魅力無い訳ありません・・・。
時には居丈高なベートーヴェンの楽曲は,鼻につく場合があるかもしれませんが,モーツァルトは別です。
心地よい旋律と和声,そして弾力的なリズムに身を任せておけば良いのですから・・・。
但し,上記レクイエムを含む晩年の作品になると,内容が著しく深化するのが分かります。死の年の作であるK.595のピアノ協奏曲を,ある友人に聴かせたところ「暗い」と言っておりましたが,これは忍び寄る死の影を端的にとらえた感想と言って良いでしょう。
クラリネット五重奏曲とか同協奏曲と同様,明鏡止水の境地というか彼岸の美のようなものが感じられ,真剣に聴かざるを得ません・・・。
勿論,10代の作品であるディヴェルティメントK.136のような,幸せの種子を振りまきながら疾走するAllegroも魅力的ですし,歌劇「フィガロの結婚」に代表される中期の作品も,典雅さと晴朗さに満ち満ちています・・・。
・・・ということで,今宵は中期の代表作であるビアノ協奏曲イ長調K.488の終章ロンドを・・・。
天馬空を行くようなロベール・カサドゥシュの演奏が聴きたかったのですが,動画がある筈もなく,取り敢えずハンガリーの俊秀と言われたゾルターン・コチシュの独奏で・・・。
この疾走感がたまりません・・・
↓
http://www.youtube.com/watch?v=aYnP2-zJQaI&feature=related
・・・と思ったら,グルダを見つけてしまった・・・。
指揮はアバドだが,オケはどこだろう・・・(ロンドン響??)
70年代中期だろうが・・・。
↓
http://www.youtube.com/watch?v=evmyB5DONQg&feature=related
いろいろお勉強になります。
そういえば、よく農作物を育てるのにモーツァルトの曲を聞かせるとか
難聴に良いという話を聞きますが、
モーツァルトの見つけだした、古典的な様式は
波長の黄金律なんでしょうかね。
モーツアルトは、クラシックが苦手な私も好きな作曲家です。
ご紹介のk.488も、ピアノのテンポが速いにもかかわらず耳に心地よく響きます。
グルダのピアノはもっと柔らかなタッチで、英文コメントにもあるように、
聴いていて疲れませんね。
ベートーヴェンの曲は起伏が激しくて、聴くのに気力を必要とします^^。
私のような素人が良いなんていうから、モーツアルトの評価が下がるとしたら
残念です。