日本三景という言葉を知ったのは，切手集めをしていた小学生の頃のことだ。
そこで，我が県の松島がその日本三景－つまり我が国で最も景色が美しいところの１つと知った。

以前，隣県の親族が挙って我が家を訪れた際，父が皆を案内したのが天守台と呼ばれる城跡と，件の松島だった。
親戚一同は，異口同音に天守台からの眺望(今でも市街地が一望される)を褒め称え，松島のまの字も出なかった。
両親も，ま，県外からの客だから連れて行ったが，県内の自分たちも滅多に行かないし，さほどのところではない・・・と言った意味のことを述べていた記憶がある。
故に，高々車で30数分のところに住んでいながら，昨日松島を訪れたのは，本当に久方ぶりということになる(前に行ったのは，多分９年前の終戦記念日，花火大会と灯籠流しの日だったと記憶している)。
つまり，滅多に行かないし，さほどの好印象も，楽しい若い頃の思い出も無いということになる・・・。

実際，我が県中部の塩釜，松島，石巻といった沿岸の諸都市や，県南部の海岸を訪れた際の好印象はあまり無い。
特に，かつて若き日に数年暮らした県南部は，仙台湾以南は遠浅の単純海岸が続き，景観的にも変化が無いし，それ故か海水浴や釣りに行っても(県南部の鳥の海，福島県北部の釣師浜－つるしはま，原釜，磯部浜といった3.11で壊滅的打撃を蒙った浜にはよく行った)，海の色は美しいとは思えなかった。
今迄間近で見た海で一番美しいと思ったのは，何と言っても，沖縄の慶良間諸島，渡嘉敷島の海だ。
透明度と水色の絵の具を落としたような色は，多分世界有数のものと思う。
グァムとサイパンは仕事で行ったが，悪いが比べものにならないと思ったし，ハワイは行ったこと無いが，多分今後行くことも無いだろう・・・。
我が県は，海にも山にも見所は有るが，はっきり言って県北部のリアス式海岸が見られる地域に行かないと，残念ながら蒼い海を間近に見ることは不可能と断じても良いかも知れない・・・。

その松島に憧れたのが芭蕉であったことは，よく知られている。
「奥の細道」にある東北紀行に旅立つ前段に，
「松島の月，まず心に掛かりて・・・」
というくだりがあり，如何に松島の風物に期待していたかが窺える。
そして，実際に訪れた場面の描写も，これ以上ないという程，詩的な賛美が際立っている。

そもそもことふりにたれど，松嶋は扶桑第一の好風にして，およそ洞庭・西湖を恥ぢず。
東南より海を入れて，江の中(うち)三里，浙江の湖(うしお)をたゝふ。
嶋々の数を尽して，欹(そばだつ)ものは天を指し，ふすものは波に葡蔔(はらば)ふ。
あるは二重にかさなり三重に畳みて，左にわかれ右につらなる。
負(おえ)るあり抱(いだけ)るあり，、児孫愛すがごとし。
松の緑こまやかに，枝葉汐風に吹たはめて，屈曲おのづからためたるがごとし。
      (松尾芭蕉「奥の細道」，５月９日松島より)
 
中国の洞庭湖や西湖が如何程美しいのか見たことはないが，それに比して遜色が無く，我が国第一の景色と断じている辺り，余程期待通り，否，期待以上でもあったのだろう。
余りの感慨に句を残さなかったが(松島や　ああ　松島や　というのは，後の世の創作らしい)，同行した門人の曽良が一句残している。

　　　　　

　　　　松嶋や　鶴に身をかれ　ほとゝぎす

私が思うに，松島が最も美しいのは，県道144号線を松島海岸ICから東に向かい，眼下に如何にも松島らしい多島海を見下した時ではないだろうか・・・。
二軒の小洒落たプチホテルが有るが(一軒は，かなり老朽化しているが)，そこからの眺望も良かった・・・。
そして，東空に満月がかかると，えも言えぬ風情が感じられよう。
さらには，灯籠流しの日の夜，沿岸の瑞巌寺(藩祖公の菩提寺)の参道には灯明が並び，幻想的な風景を現出させる。
また，日中の瑞巌寺門前町の賑わいも活気があって良いと思う。

・・・つまり，やはり松島の魅力とは，離れて海を眺めること・・・という結論に帰着するのである・・・。

一応，本家に画像を貼りました。
只，松島の全容を捉えて紹介するのは，実に難しいです・・・。
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http://blog.goo.ne.jp/fw14b_2005/e/071e0861ffb512089eb3327a4dd123de