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關西紀行-其之壱拾七「歴史追想・・・ 」

圧倒的な思いを残して,甘樫の丘を後にする。
途中別の登り口と,立派な駐車場を発見する。
20年前に行ったのは,一体どっちだったのだろう・・・。
展望台も南と北があるようで,私が登った北側が高さとしてはピークのようだ・・・。


後は,亀石のあった交差点まで戻り,明日香村立聖徳中学校(皆賢くなりそうな名前だ)の前を通って,鬼の俎と鬼の雪隠へ行く。
伝承では,この辺りの鬼が人間を捕らえ爼手で料理して,雪隠で用を足した・・・というものたが,どうやら元々は1つの古墳の横穴式の石室(雪隠)と蓋とも言うべきその上部だったらしい。
そう言われてみれば確かにそうだ。
道路を挟んで数10mしか離れていないので,雨で盛り土が流れ落ち,露出した蓋が出水か何かで流された・・・と考えるのが普通だろう。
蓋である爼の方が高い位置に有るのではあるが・・・。


緩やかな下り坂を西に向かう。
見事な夕陽が西の山の端,葛城・金剛山系の彼方に落ちつつあった。
葛城・金剛という名を聞いて,空母と戦艦,或いはエヴァの葛城ミサト嬢を思い出した方は,私と同種の人種である・・・(笑)。
その2つの間を抜けるのがR310であり,水越峠を越えると千早赤阪村となる。
つまり元弘年間,おそらく20数倍もの鎌倉幕府軍を相手に奮戦した楠木正成の籠もった赤坂城やその奥の千早城はあの裏となる。
かつて,飛鳥資料館や平城宮跡を見た学生時代の踏査実習に於いて,観心寺を訪れたことがあり,楠木正成所縁の寺と聞いて,ふ~んと思っていた無知な自分を恥じると同時に,何と勿体ないことをしたか・・・と,悔いが残ってならない・・・。
地図を見ながら旅行するという習慣がまだ無かったので,一体自分が何処に居るのかが全く分かっていなかったし,河内長野市のPL教団本部を見ても,何とも思わなかったくらいである。
今なら携帯の地図と首っ引きだったであろう・・・。
観心寺の奥には,正成の息子3人(正季,正家,正儀)が仕えた後村上天皇の陵墓もあり,ここでも何も知らなかった当時の自分を悔いることになる・・・。
鎌倉幕府の大軍を前にして,一歩も引かなかった正成の勇は正に壮として讃えるべきだし,そのゲリラ的な戦術眼にも見るべきものがあると思うのだが,それでいてあの人間の欲望や損得が露骨に渦巻く南北朝時代に於いて,その清々しい生き様は一体何だったのか,何らかの根拠や拠り所がが有ってのことなのか・・・と,ついつい思ってしまう・・・。
正成のような幕府御家人ではない地方(じかた)武士は,当時悪党と蔑まれていた。
そうした中であのような卓越した戦術眼を持つに至ったことと,当時としては極めて珍しい清廉潔白な志を保ち続けたことの根拠について,作家の海音寺潮五郎氏は「武将列伝」に於いて,朱子学の素養を持っていたからではないか・・・という説を展開しておられた。河内の片田舎の下級武士に過ぎなかった正成だが,実は教養人であった・・・というのがその主張であった・・・。
その真偽の程は,私の如きド素人が考えられる筈もないが,当時の被差別民であった散所の民等にも領主として平等に接していたという話も聞いたことがあるし,吉川英治の「私本太平記」に於いてもそのような庶民の思いや願いを大切にする領主である正成が描かれていた。
正成の思いは,紛れもなく寝食を共にし,時には共に土にまみれて農作業に力を尽くした河内の民に対してあったのであろう。
なればこそ,建武新政権と旧鎌倉御家人の代表でもある足利尊氏(当時は高氏か)の間で,さんざん心が揺れたことであろう・・・。
餅は餅屋というのに,軍師たる正成の絶妙な作戦を一切支持せず,自爆としか言いようのない兵庫出兵を強いた建武新政府の瓦解は,この時点で決定的となったと言える・・・。後世の大坂の陣もそうだが,戦は武士に任せるべきであり,戦術・戦略を知らぬ者が口を出すとすべてが・・・という典型であり,正成や大坂城の将星たちこそ気の毒であった・・・。


・・・という余計なことを,ついつい考えつつペダルを漕ぐ。
要するに,史跡や寺社などというものはちょっと見に面白いものではなく,その背景にある歴史を調べて理解することによって生じる思い入れによって,初めて興味深い者となるのではないかと思う・・・。
金剛・葛城山系に沈む夕陽を見て,私が天険とも言うべき赤坂城・千早城に籠もって鎌倉幕府の大軍を相手に奮戦した楠木正成に感情移入したように,この飛鳥の里山を見て,かつて聖徳太子や蘇我氏が・・・と思うからこそ,史跡巡りは楽しさを増すと思う・・・。
似たような内容を,その晩宿に戻ってから書いたが,その12月30日付けで顔本にアップした文章の方が,時間が経っていないだけに,より端的に私の思いが表れているように思われる・・・。


・・・ということで,終わるかな・・・と思いきや,終わりませんでした。
飛鳥の風物もあと1つか2つ(3つかな・・・?)。
いよいよ,この日も終盤に差し掛かります・・・。

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